コロナ下という見通しの立たない苦境下において、各企業トップの発言に一層の注目が集まっている。しかしトップとのコミュニケーションやメディアリレーションズに悩む広報も多い。誰に聞けばいいか分からない……社長取材、記者会見などのトップが発信する場においての広報のお悩みに、メディアトレーニングのプロである筆者が回答する。
*本記事は3月1日発売の『広報会議』の転載記事です。

五十嵐 寛(いがらし・ひろし)
ハーバーコミュニケーションズ 代表取締役
1994年 神奈川大学 経営学部国際経営学科卒(広報専攻)。同年プラップジャパンに入社。2001年ヒルアンドノウルトンジャパンに移り、2004年1月から広報コンサルタント、ライターとして独立。同年3月に「ハーバーコミュニケーションズ」を立ち上げた。日本PR協会、経済広報センターなどでメディアトレーニングに関する多くの講演も行っている。
Q おしゃべりでリップサービスしがちな社長に対して、どのように、らしさを崩さずコントロールしたり、伝えていけばいいか分かりません。
A
おそらく伝えたい、教えたい、相手に喜んでもらいたいという気持ちが強い社長さんなのでしょう。確かにそういった人間味を抑えてしまうのは勿体ないですね。まずはその旺盛なサービス精神を尊重しましょう。その上で、一般的に記者・ライターは結論を先に聞きたがり、できるだけ簡潔な話を求めていることを教えてあげると、そのほうが記者にとって嬉しいことだったのか、と気づいてもらえるかも知れません。
リップサービスということですが、単に耳障りのいい言葉を並べる程度ならそれほど気を揉む必要はないでしょう。それよりも、本来話すべきではない事柄を、相手が喜ぶと思ってついつい話してしまう……いわゆるオフレコ話をするようなら問題です。「記事になって困るような話はしない」というのが原則です。それに、オフレコ話は記者・ライターにとって、聞いたところですでに知っていたり、つまらなかったということも多いと聞きます。
また、今後その関連の話を書きにくくなるといった弊害もあり、実はあまりサービスにはなっていないようです。こうしたことも機会を見て伝えていってはいかがでしょうか。
Q 社長が取材を受けない、人前に出るのが苦手です。広報としてできることはありますか?
A
そういう社長さんは少なくないですね。以前取材を受けて嫌な思いをしたという方と、ただ単に食わず嫌いのような苦手意識を持っている方に大別できるかと思います。
