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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

ラジオCMは「エモさ」か「技術」か。今夜はまじめに広告の話(ゲスト:井村光明)【後編】

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〜ACCゴールド パナソニック「音響システム」「娘」篇〜

定時退社促す家族の声、権八さんノックアウト

権八:素晴らしいじゃないですか(笑)。

中村:権八さんニコってしていましたね。

権八:これは、効きますよね?

井村:「パパ帰ってきてね」とね。ややこしいんですけど、ラジオCMってA部門とB部門がありまして、A 部門っていうのは一般のラジオCMなんですよ。B部門っていうのは、ラジオCMじゃないけれど、音を使った工夫で何かしら社会に影響を与えるようなクリエイティブを評価するものなんですね。今聴いていただいたものはCMなんですがA部門はこのCMがゴールドを受賞して、B部門でもゴールドがこの施策だったんですよ。要は、ある企業の定時退社の時間に家族がアナウンスをする、というアイデアですので施策そのものがB部門でもゴールドを獲った作品でした。

権八:これグランプリじゃないんだ!すごいね(笑)。

井村:これから聴いていただくグランプリと競ったんですけどね。

権八:なるほどね。でもそのアイデアが素晴らしいじゃないですか。家族の声で定時退社を促すってさ。自分の家族じゃなくても、みんな自分の家族のことを思い出しちゃうし、聴いている方のリアクションも、なんか泣いちゃうねとか、頑張れ!って言いたくなるとか。みんながあったかい気持ちになって素晴らしいですよね。

井村:うん。これは定時退社の声を家族に変えただけだけど、こんなにも受け取る気持ちが変わってくるっていうのが、音声メディアのクリエイティブの力強さというか。これだけのことしかやってないのに、こんなに広がるっていう。伝わるものがあるってものですよね。

中村:なるほど。

権八:いやー、なんかずるいっちゃずるいんだけど(笑)。働き方改革が導入された時に、僕なんかはひねくれているから「定時に帰ればいいってもんじゃないよ」とちょっと思っちゃったりしたのね。こういう業界だと特に、働きたいのに働けなくなっている人もいっぱいいるじゃない。

中村:確かにね。

権八:と思ったけど、やっぱこういうのを聴いちゃうと、「もう、すみませんでした!」みたいな。帰ります。すごく強いですよね。

井村:「働き方改革」みたいな正論が、子どもの声でふっと心に入るものに変換されている気がするんですよね。

権八:本当にやられた。

中村:はい、素晴らしい作品でしたが、これと競ってグランプリになった作品をいよいよ……と、その前にですね、審査会の模様とグランプリ決定の瞬間というのも収録していますので。

井村:あるんだ(笑)。

中村:ちょっとお聴きください。

権八:鶴光さんの話も聴けるのかな?

〈審査会の様子〉

井村:じゃあグランプリ1本。(笑福亭)鶴光さん

笑福亭鶴光:やっぱりグランプリにすると、ロボット掃除機のこれかなと思ったりするけどね。

井村:橋本(吉史)さん

橋本吉史:CMに限らずその音声コンテンツとして、これ単体で聞いたときに、その前後の文脈なく。聞いたときの完成度みたいな話がやっぱりグランプリに値すると僕は思うんですけどそれでやっぱりルーロ(パナソニック、ロボット掃除機)の聞く前と聞いた後で圧倒的にもうね、もう視点が変わってしまったっていう。見る世界が変わってしまうって聞く人の体験として自分はすごく一番まっとうなやり方をしてるんじゃないかっていうのは思いました。

井村:澤本さんいかがでしょう。

澤本:なんか、3年後ぐらいに、あの年のってなったときに、一番分かりやすいのは、「あ、何か聞こえなかったやつが聞こえるようになったやつね」って言ったら「あ、そうそうそう」って言いやすいかなっていうふうな印象があって。ルーロがいいなと思います。

鶴光:能の音楽で、叩いて「おーまーえーは~」って(笑)

一同:爆笑

井村:最後は正の字でここに1人ずつ入れてください。お願いします。

スタッフ:16番、16、42、16、16、16、16、42、16。以上です。

井村:はい、これは決定ですね。

〈ココマデ〉

権八:面白いね、なんかね。

中村:その作品を聴かないと分からない話で盛り上がってると、ちょっと嫉妬しますけどね。

権八:そうだね。盛り上がっていたところは、よく分からなかったね。

中村:分かったことは、圧倒的票数だったこと。16と42で恐らく42がさっき聴いた…。

井村:ですね。

中村:ゴールドのパナソニックの「音響システム」のCMで、グランプリが今「ルーロ」っていうのが聞こえましたけど、何か聴く前と聴いた後でなんか違うみたいな。

澤本:そうそう。このCMを聴くと、あるものを聴く前と聴いた後でもう音声認識が全く違うのよ。

権八中村:へえーー。

澤本:こんなことあるんだ!っていうのをこのラジオCMで実感してもらえるっていうのがすごく新鮮で。

中村:なるほど。

澤本:それだけ振っておきます。

中村:ちょっと早速、引っ張りまくって期待大の!

澤本:はい。

中村:今年のACCグランプリを受賞したCMを聴いていただきましょう!パナソニックのロボット掃除機ルーロのラジオCMです。

〈ACC グランプリ パナソニック ロボット掃除機ルーロ、「学習するチカラ」篇〉

NA:ラジオをお聴きのみなさん。
今から私が何と言っているのか。よく耳を澄ませて聞いてください・・・。
モザイク音:「パナソニックのロボット掃除機ルーロ」
NA:・・・わかりませんよね。私はこう言っていたんです。
通常音:「パナソニックのロボット掃除機ルーロ」
NA:ここでもう一度、先ほどの音声を聴いてみると・・・
モザイク音:「パナソニックのロボット掃除機ルーロ」
NA:あら不思議。聴き取れました、よね?
わからなかったことも、一度学ぶだけで、わかるようになる。
聴き取れたあなたは、優れた学習能力の持ち主とも言えます。
では、こちらはどうでしょう・・・?
モザイク音:「お部屋をすみずみまで、ピカピカにします」
NA:私はこう言っていました。
通常音:「お部屋をすみずみまで、ピカピカにします」
NA:そして、先ほどの音声をもう一度・・・
モザイク音:「お部屋をすみずみまで、ピカピカにします」
NA:あなたならもう、こんなナレーションだって聴き取れてしまうはず・・・。
NA:新しくなった・・・
モザイク音:「パナソニックのロボット掃除機ルーロ」
NA:なら、今までわからなかったゴミのたまり場も学習して・・・
モザイク音:「お部屋をすみずみまで、ピカピカにします」
NA:そう、ラジオCMをお聴きのあなたのような頭のいい一台です。
CI:Panasonic♪

〈ココマデ〉

井村:どうでした?

権八:あー、なるほど…。

一同:(爆笑)。

中村:あれ!?権八さん?

井村:審査会でですね、これ1回聴くと、誰かに聴かせたくなる感じっていうのがあるなあと思ったんですね。

中村:うん。

井村:自分がもう答えを知っているじゃないですか。僕も今、権八さんと中村さんの顔を見ながら聴いていて、権八の顔が渋いから、あれ?っと思ったんですけど。

権八:いやいや。

井村:一発目の「ロボット掃除機ルーロ」よりも、二発目の「お部屋をすみずみまで」の方が、「ロボット掃除機のことを言っているんだ」っていう耳で音声を聞くから、耳が聞こうとしているっていう体験がより強まって…。

中村:ピカピカにしますが、聞き取れかけたような〜みたいな。

井村:そこも耳の特性としては、面白いなあーという話をしていました。

権八:はい。

澤本中村:(爆笑)。

中村:権八さん?釈然としなそう。

権八:どうなんでしょうね。僕が、すごくリスナーの知性を要求するような感じを受けちゃったかなー。要するにこれって、聴きにくかったものを聴きやすくなるくらいきれいにするみたいな、そういうシンプルな話じゃないじゃないですか?

井村:学習するっていうところが?

権八:うん。

井村:音の感覚を楽しんでいる気分の時に、「今、あなたがやっているのは学習っていうことでしたね」っていういきなり理屈が入ってくるところがたぶん分かりにくいと感じたと思うんですけど。最初聞こえなかったものが聞こえるようになるんだ!って。体験というものは、分かっても分からなくても面白く感じるとこじゃないかなって思って。

権八:そうですね。面白かったです。そういうモチーフは面白かったですね。ただそのことと、製品の結びつきのロジックに少しジャンプがあるというか。

井村:頭良すぎるから。

権八:そうそうそうそう。あの感じがしましたね。あ、分かった。聴く前と聴いた後でいろんな認識が一変する、みたいな話が何かもっと大きなことのように…「僕の何が変わるんだろう?」と思って、ワクワクしちゃったんだと思う(笑)。

中村:ニンジンが食べられるようになりました、みたいな?

権八:いや、だから世界を見る眼差しが変わるんだろうなと思って、ちょっと(笑)。

井村:期待が高かった?

権八:高すぎたかも、ごめんなさい!でも確かにすごいアイデアですよね。

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