佐藤可士和が見据える未来
前回の放送では、クライアントとお客さまの間に立って「双方のコミュニケーションを“デザインの力”でつなげていくのが仕事」と語っていた佐藤さん。これまで、ユニクロなどを展開するファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏や楽天の会長兼社長である三木谷浩史氏、日清食品ホールディングス社長・CEOの安藤宏基氏といった名立たる経営者と仕事をしてきました。
自身がクライアントとのコミュニケーションで心がけていることは「経営者の壁打ちの相手をしているようなイメージ」と佐藤さんは話します。社会情勢について会話を交わすなかで、「例えば、サスティナビリティ(持続可能性)に対して、企業そのものとしてなにをしていかなければならないのか。
コロナ禍で働き方も変容していくなかで会社はどういうものになっていくのか、などの話をしていき、徐々にプロジェクトの話に近づいていく。『だから、いまはこういうことをしたほうがいいのでは?』と(アイデアを)提案し、キャッチボールをしている」と言います。
そして、私たちが生きている「地球や社会全体がどこに向かっていくのかを知ることが、一番の近道」と明言。それを知ることが「次にみんながなにを必要としているのか」を議論するためでもあると説明します。
ブランディングするうえでのこだわり
佐藤さんの強みは、さまざまな業種の人たちと関わっていることによるインプットの多さ。ときには、およそ30もの案件を同時に進めることもあるそうで、ファッションやITをはじめ、医療、教育、地域産業などジャンルは多岐にわたります。それらは一見別々なものと捉えがちですが、「みんな社会のなかに存在していて、問題は共通しているんです。全部がつながって見える。いろいろな仕事をすることで、(社会全体が)どこに進んでいるのかが結構わかるんですよね」と話します。
また、クライアントから得るインプット以外に大きかったと話したのは、雑誌の連載での対談企画でした。自分が会いたい人と会う、をコンセプトにさまざまな業種のスペシャリストと対談してきたそうで、「そういう人との対話からは、いろいろなインプットがもらえますよね」と大きくうなずきます。
