本当に聞きたいのは“隣の人”の声 Z世代向けメディアの運営で見えてきたもの

「私のコンプレックスを、私のアドバンテージにする」をコンセプトにした朝日新聞社のWebメディア「かがみよかがみ」は、18歳から29歳の女性が書き手となるメディアだ。立ち上げたのは同社員で記者経験もある伊藤あかり氏。Z世代の女性たちはいま、メディアに何を期待しているのか。伊藤氏に等身大の声を聞いた。

月刊『宣伝会議』6月号(5月1日発売)では、「広告プランニングの新・潮流『新・メディアの教科書』」と題し特集を組みました。ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。

新聞もWebも根底の理念は同じ
異なるアプローチで社会を変える

私は2009年に新卒で朝日新聞社に入社。5年間の記者経験の後、2014年に大阪本社の紙面編集を担当する部署に配属になりました。それでも「記事を書いていたい」という思いが強く、社内兼業のような形でWebメディアの「withnews」で執筆を続けていたところ、「ガングロギャルと新聞社、絶滅危惧種同士の作戦会議」という記事が多くの人の目にとまることに。東京で本格的にWebメディアに携わることになりました。

ちょうどその頃、当社では専門ジャンルに特化したバーティカルメディアのプラットフォームがスタート。その中のひとつであるミレニアル女性向け「telling,」の立ち上げを経て、2019年、32歳で「かがみよかがみ」の編集長に就任しました。

私は朝日新聞がアプローチできていない、Z世代に向けたメディアをつくりたいと考えていて、そのアイデアには社からの期待も感じました。

Z世代が求めるメディアとはどのようなものなのかを徹底的に考え、見えてきたのは、個人の想いを伝える場としてのメディアでした。これは新聞というメディアとは全く異なる特性を持つものです。

私が新聞というメディアに関わるなかで疑問を抱いていたのは、「こういうコメントが欲しい」と結論ありきで、記者が取材をしてしまう場面があるのではないかということ。

例えば、ある法改正について街頭インタビューで賛否の声を聞く取材をするとします。街の声が、賛成が圧倒的多数だったとしても、両論併記の観点から、反対コメントを取れるまで帰れない。

また、“記者が話を聞く”という時点で、「こういう答えが求められているのかも」と相手の回答にはフィルターがかかってしまい、真の意味で人の考えを伝えきれていたかというと疑問が残ります。

誰かに聞かれたから答えるのではなく、自分の胸の内からあふれ出すような伝えたいことって何だろう。

そう考えた時に、そんな心からの想いを話せるような場所をつくりたいと思ったんです。

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