※月刊『宣伝会議』7月号(6月1日発売)では、「企業が聞くべきSNSの声とは? ネット世論と広告炎上」と題し特集を組みました。ここでは、本誌に掲載した記事の一部を公開します。

教授
瀬地山 角 氏東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2009年より現職。この間にソウル大に留学、ハーバード大、カリフォルニア大バークレー校で客員研究員。専門はジェンダー論。
・ジェンダー視点での炎上広告を4象限に分類。・賛否の差は「現状の追認」か「半歩先」か。・ジェンダーへの意識と知識が広告制作には必要不可欠に。
ネットの発達に伴い表出するジェンダーCMの炎上
ここ数年、企業のCMや自治体のPR動画が炎上し、メディアに取り上げられることが増えています。
その背景にはやはりインターネット、SNSの普及があるのは間違いありません。昔はテレビをつけている時以外にCMに触れる方法がなく、問題とされるCMがいつ放映されるかは視聴者にはわからないため、そのCMを見るために録画すること自体が難しい状況でした。
しかし、いまでは誰でも動画にアクセスでき、繰り返し見ることができるようになっているため、該当のCMをより多くの人が見られる状態にあると言えるでしょう。
CMや動画を見て抱いた不快感も表明しやすくなりましたし、その不快感に対して賛同や共感を集めるしかけもネット上に生まれています。ひとりの不快感や嫌悪感、疑問はネットを介することであっという間に広がり、企業や自治体も無視できない大きな声となります。
炎上したCMにも賛否あり、私自身、見ていて「ユーモアとしてアリなんじゃないか」と思うものも少なくありません。表現物は受け手によって反応が分かれるものなので当然なのですが、中には看過できないものもあります。
私の場合、広告が炎上するたびに取材を受けることが多くなりました。そして「またか」と思ってコメントしているうちに、その炎上にはパターンがあることが見えてきました。そしてそのパターンをベースに拙著『炎上CMでよみとくジェンダー論』(光文社新書)を昨年5月に上梓。その中でジェンダーに関して批判を浴びたCMについて、【図表1】のような4つに分類をし、かつそれぞれの分類に対して、批判を受けなかったCMについても紹介しています。