※月刊『宣伝会議』9月号(7月30日発売)では、「コロナとDX 顧客は大きく変わった!現代における『顧客理解』方法と実践」と題し特集を組みました。ここでは、本誌に掲載した記事を一部公開します。
デザイナーとしてキャリアをスタートした細田育英氏は、2004年にソニーに入社し、ウェアラブルや先端デバイス、人工知能チャットアプリ開発などの新規案件を担当。現在は、ソニーのインハウスデザインで培ってきた能力を外部にも解放すべくスタートした企業、ソニーデザインコンサルティングでソニーグループ外のパートナーや企業のプロダクトのデザインからブランド構築、新規ビジネス開発など幅広い領域でクリエイティブディレクションを行っている。
翌年に発売が決まっているプロダクトから、5年先、10年先に誕生する新規案件まで、様々なスパンのプロジェクトに携わる細田氏は、「顧客理解」には、“ストーリー”を描き、その気分に共感してもらうことが重要だと考える。
しかし、その“ストーリー”を描く方法は、「プロジェクトの時間軸により異なる」と話す。プロジェクトの時間軸が異なるということは、届けたい顧客の時間軸も異なる。現在のお客さまに届けるのか、少し未来のお客さまに届けるのか。それにより、顧客理解の手法を使い分けているという。
細田氏が考える「顧客理解」に迫る。
「顧客理解」の基本は顧客と目線を合わせること
「コロナ禍前は、表参道や渋谷で、『少しお話うかがえますか?』といった調査もよくしていました。会議室であれこれ考えるよりも、外に出れば目の前にお客さまとなりうる人たちがたくさんいる。この考えで、街に出かけていました」と細田氏は話す。
インタビューを行う際、大切なのは「相手の目線に合わせること」だという。企業がインタビューを実施すると、「こちらの喜ぶ回答をしなくては」との意識からか、本心を聞くことは難しい。そのため相手の目線に合わせた、構えなくてよい環境をつくることがポイントだと話す。
「会社にユーザーを招いてインタビューをすることもありますが、皆さん声のトーンが上がりがち。これは、かしこまってしまっている証拠。面白いのがインタビューの合間に『10分間休憩にします』とお菓子と飲み物を置いたりすると、声のトーンが2段階くらい下がるんです(笑)。その時に話している雑談内容こそ本心で、顧客を知ることにつながると考えています」と細田氏。

