*本記事は10月1日発売の『広報会議』11月号の転載記事です。
POINT1 広報する目的の設定
何に対する謝罪か 明確にしておこう
まずは広報する目的を設定することです。その広報によって何をメッセージとして伝えたいのかテーマを設定すること、あるいは自社が求められているものは何かを明確にすることと言い換えてもいいかもしれません。
2021年前半にも相次いだバイトテロのケースを例に説明しましょう。レストランでアルバイトの学生がバックヤードで食品を不衛生に取り扱い、その様子を動画に撮りSNSにアップしたところ拡散・炎上したというものです。
飲食店・レストランを営む企業が広報によって伝えるべきメッセージは、衛生管理を徹底しているので食の安心・安全は維持されている、今後も安心・安全であるから来店してほしいというものでしょう。だとすれば、広報の内容は衛生面での安心・安全に的を絞ることになります。おのずと、謝罪の言葉は「食の衛生面に不安を招き申し訳ない」となり、原因や再発防止策は店舗の衛生管理の状況を説明すれば足りることになります。
失敗例が北海道日本ハムファイターズの謝罪文です。2021年4月に試合前の円陣の様子をSNSに公開したところ、「日サロ行き過ぎやろ、お前」と同球団に所属する万波中正選手の肌の色を茶化す声が収録されていたため、人種差別的発言であると批判が集まりました。
これを受けて、8月31日に、川村浩二球団社長名義で「本年4月11日に公開した試合前の選手円陣動画において、差別的発言が収録されていたことを心よりお詫び申し上げます。差別的発言は、どのような状況、どのような間柄であっても、決して許されるものではありません。円陣内の個別発言について確認が至らないまま球団公式ツイッターでそのシーンを公開したことは、当球団の管理体制が不十分でした」との謝罪文を公表しました。しかし、この表現では、確認不十分のまま公開した体制のあり方を問題にしているかのように読めてしまい、人種差別を許さない球団であるという姿勢やメッセージを伝えることはできませんでした。その結果、謝罪文に対しても批判が集まる事態となりました。