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コラム

残したい日本の商品・サービス データブック

残したい日本の商品・サービス データブック2021<クリエイティブディレクター 増田総成 編>

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回答者:増田総成(RABBIT クリエイティブディレクター/アートディレクター)

ますだ・ふさなり 電通テックを経て、2014年ADKへ移籍。アートディレクターとしてマス広告を含む統合キャンペーンの企画制作を担当。2018年「CHERRY」設立。2020年独立し「RABBIT」設立。WWFジャパンをはじめ社会課題に関するプロジェクトを多く担当している。

 

コロナ禍、デジタル化、働き方改革など……多くの変化が急速に進む中で、需要が縮小している分野は多くあります。マーケティング、クリエイティブの専門家の方々が、今応援したい、救いたい商品・事業を紹介する本リレーコラム企画。その商品・サービスを救う手だてはどこにあるのか。
第一回目の今回は、社会課題に関するプロジェクトにも多く携わる増田さんに、ご自身が担当された2つの商品・事業から、継続性を担保するためのアイデアを紹介いただきました。

FILE① たかが即席味噌汁を、されど即席味噌汁へ

――増田さんが応援したい企業・商品・サービス
「米忠味噌本店 即席味噌汁 特赤/淡醸」
 

 
本商品は、文政3(1820)年創業以来、大正、昭和、平成、令和と、天皇陛下のご来阪の節にはご食膳にのぼるほど、最高の材料を使い、丹精を込め手間暇をかけたフリーズドライした即席味噌汁です。最大の特徴は、代々受け継がれてきた赤味噌・白味噌。そしてカボチャやオクラといった即席味噌汁にするのが困難な食材にも積極的にチャレンジした商品であること。常識を覆す即席味噌汁として、出来立ての味噌汁を上回るほど、そもそも、とても商品力が高い商品でした。
 

商品の顔つきを変えること

味噌汁市場は、既視感のあるパッケージが多いです。フリーズドライした即席味噌汁の顔つきとして、新しい市場を開拓する力を感じるデザインへ刷新する必要を感じました。
本商品では、味噌汁と具を、優しいトーンのイラストレーションで表現することで、現代の食生活の中での“新しい味噌汁”に昇華しています。また、手に取る商品であるため、手触りも顔つきのひとつとして捉え、味噌汁と相性がいい風合いの良い紙で丁寧にパッケージ化。通常は盛り込みがちな文字情報も極力排し「特赤」「淡醸」といった商品名のみの潔い表記にとどめることで、新しい顔つきをより鮮明にし、他社と一線を画すブランドへ仕上げました。
普段使いの商品でありながら、手土産品購入者に対し新たな選択肢を提供し、手土産市場に対しては多くの人に選ばれる美しさを備えていることから、市場拡大の一助を提供できたと思います。
変化する時代の中で、長年受け継いできた伝統的な食文化を継承しながら次世代に伝える方法として、“変えるところは一新する”、メリハリのあるリブランディングが効果的だと思います。

 

FILE② 本業と掛け合わせ、体験を提供

――増田さんが応援したい企業・商品・サービス
「greenbird ビーチクリーン活動」
 
greenbird (グリーンバード)は、”きれいな街は、人の心もきれいにする” をコンセプトに、日本全国の海や街でゴミ拾いを中心としたクリーン活動を行うNPO 法人です。
昨今SDGs が取り沙汰されていますが、グリーンバードは、それ以前の2003年団体設立以来、19 年間にわたりごみ拾い活動を愚直に取り組んできた背景があります。
しかし、コロナ禍の制限により活動が制限され、ゴミ拾いだけではない新たな活動の切り口を模索していました。
切り口のヒントは、コツコツと拾い続けた「ゴミ」の中にありました。その中でも多いのがプラスチックゴミ。近年、プラスチックストロー廃止やレジ袋の有料化など、使い捨てプラスチック削減に向けた取り組みが進んでいる一方で、年間800 万トンものプラスチックごみが海に流れているなど、依然として地球環境や生物生態系に甚大な影響を与えている問題がありました。
そこで同団体では「これからの未来を生きる子どもたちが、前向きに楽しみながら、地球環境を考えるきっかけをつくりたい」という想いのもと、協力各社とともに新たなアップサイクルプロジェクトを立ち上げています。
それが、集めたプラゴミを原料にしたプラモデル「RePLAMO(リプラモ)」。売り上げの一部がビーチクリーン活動に寄付される仕組みです。
 

 

プラごみから生まれたプラモデル RePLAMO(リプラモ)。

 
さらに、本業のビーチクリーンと紐付けたイベントとして、海をキレイにするだけでなく、自らの手で拾ったごみがプラモデルに生まれ変わるまでの体験を、ひとつの商品としてパッケージ化することで、新規層の顧客開拓にも寄与しているのです。
プラゴミ問題の解決に向けた社会貢献を上手く掛け合わせ、「体験」を提供することで、コロナ禍における新たなビジネス開拓につながった例だと思います。
 

本業のビーチクリーンと掛け合わせて、体験とモノ、両方を提供。