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吉岡虎太郎さん、20年前と伝わる言葉って変わりましたか?

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日本の広告市場においては、インターネット広告費がテレビ広告費を追い抜くなど、広告メディア環境は大きく変わってきた。ではこの変化は、広告における言葉にも影響を与えているのだろうか。コピーライター/クリエイティブディレクターとして活躍する吉岡虎太郎氏が考える、インターネット登場前と今の違いとは。

コピーライター 吉岡虎太郎氏

1992年博報堂に入社し、現在は博報堂クリエイティブ・ヴォックス所属。日本コカ・コーラやかんの麦茶、スズキ自動車ハスラー、ミツカン鍋つゆ、レディースアートネイチャー、花王ビオレ、リクルート、朝日新聞、トヨタ自動車、リプトン、ロフトなどを担当。TCC審査委員長賞、日経広告賞最優秀賞、JR東日本ポスターグランプリ優秀賞など受賞。

 

人は「動物化」することで消費も生活も実用的になっていく

広告の言葉が変わったのか?
ということで、インターネットが今ほど普及していない20年前と比べて考えてみたいと思います。例えばあの頃は、「オタク」という言葉が普通のものになっていった頃でしたよね。インターネットやデジタルが普及して、生活者がパソコンや携帯に向かう時間が長くなった時代です。

ちょうど20年前の2001年、その「オタク化」という現象を事例に用いながら、哲学者の東浩紀氏が『動物化するポストモダン』という本を出版しました。その本の中で東氏は、デジタル化した社会では「動物化」が進むと言っていました。「動物化」とは、その言葉の通り、人が動物のように行動するということです。

動物は、目の前の自然の中から自分の「欲求」を最短で満たすものをチョイスします。例えば、食事や睡眠や安全などがそれにあたる。

一方で、人間は必ずしも欲求を直接的に満たすだけではなくて、自分がどう見られたいかとか、他人とどう違うかとか、もっとドキドキしたいとか、イメージや物語を選ぶ。

東氏が指摘したのは、デジタルは人々が動物のように、自分の欲求や好みだけを求めて生きるようになることを促進するツールだということでした。僕は、この20年間でこの通りの状況になったのではないかと思います。

例えばECでの購買をイメージしてみてください。物が欠乏したら、自分でサイトを開き、自分で購入ボタンを押す。そしたら誰かが届けてくれて、実物が手に入る。便利ですが誰とも会わず家から一歩もでないので、他人や何か他の物との偶然の出会いやドキドキなどはありません。

さらに、ECサイトで物を買い続けると、それに関連したものがおすすめされるようになります。自分の興味や欲望をピンポイントで刺激する商品が次々と目の前に現れて、その選択肢の中から合理的かつ実用的に自分の欲求を満たしてくれるスペックを取捨選択するようになる。

その時、必然的に消費から自己表現の要素は減っていきますよね。東氏はこれを「データベース消費」と言っていましたが、やはり私たちは徐々に「動物化」していると思うのです。

その反面、「体験」の価値はより増しているとも言えると思いますが。

「広く、大勢に伝える」言葉から「狭く、個人に伝える」言葉へ

消費行動が変化しているのであれば、それに伴って広告における「伝わる言葉」も変化しているはずです。

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・あなたが論理的でないのは、
“訓練の機会” がなかったから、です。
著述家 吉岡友治
・みんなで話そうよ、ジェンダーのこと。
電通 権すよん、岩田泰河
・言葉の面白さに気づいた瞬間は、
今でも明確に覚えている
作詞家 いしわたり淳治
・アナウンサーの仕事は
目の間の事象に言葉を「添える」こと
アナウンサー 倉田大誠
・「伝える」は一人でもできる
「伝わる」は相手がいて初めて成り立つ
病理専門医 市原 真
・「伝える」と「伝わる」
両者の違いはシミュレーションにあり
アスリート 岩政大樹
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言葉にできない事象を伝わる言葉で発信する
テキストデザイナー 新井茂晃
・言葉の力で
職業人としてのアイデンティティを構築する
藤枝市理事  山梨秀樹
・吉岡虎太郎さん、
20年前と伝わる言葉って、変わりましたか?
博報堂クリエイティブ・ヴォックス 吉岡虎太郎