本題に入る前に、企業ブランディングの昨今のトレンドについて述べよう。日本では毎年2月、「BestJapan Brands」という日本の企業のブランド価値ランキング上位100ブランドを発表している。
2021年発表のBest Japan Brands2021では、ランクイン企業58社のブランドリーダーに、ブランディング成功の要諦についてインタビューを行った。その結果、実に9割の方々から、「企業ブランドの経営的意義がますます強化され、その役割が重要となってきている」との回答を得た(図1)。
その背景としては、いくつかの要因が考えられるだろう。ひとつは、競争の軸足を海外に求め、「グローバル化」のために必要に迫られているという。さらに、昨今の不確実な時代を迎えたことがきっかけで、顧客(取引先)側にとっても企業側にとっても、より企業ブランドが持つ役割が増してきているという。
顧客(取引先)側からみると、モノの価値だけではなく企業の志や社会に対する意義のある活動をしているか否かが、ブランド選択に大きな影響を与えてきているという背景から、企業ブランドはパーパスやフィロソフィーを伝える役割としてその重要性が増してきている。一方、企業側にとっては、企業自身にとっての立ち返る先として、あるいは働き方の変化に伴い、帰属意識が希薄になりがちな傾向にある従業員の求心力を強化する手段として、企業ブランドの役割への期待が大きいのだという。
利益に貢献する「信頼」
前述の通り、BtoC、BtoBにかかわらず、トレンドとして企業経営における企業ブランドの果たす役割がますます重視されてきている。一方、もともとBtoBブランドにとって企業ブランドの存在はどのようなものだったのだろうか。
実は、BtoB企業にとって、もともと企業ブランド強化の経営的意義は大きかった。その理由について、BtoCビジネスとの違いの観点からみてみることにしよう。
まず、「購買決定権者」の観点から考えてみよう。BtoCビジネスでは、その商品サービスを利用したいと思う主体が意思決定権者であり、同一人物であることが多い。
