まずは大きな流れを振り返ることにしよう。本連載「ウェブリスク24時」は、広報部門が、2012年当時急拡大していたSNSにどのように向き合い活用法を検討するか、また頻発するネット炎上の動向を踏まえてどう対策を立てるかを最新の事例をもとにまとめるコラムとしてスタートした。
2012年11月号の第1回は、大学4年の学生が電車内で寝ている老人を「盗撮」し、「歯がありませんw」などと笑いものにするコメントを付けてTwitterに投稿したことで炎上、内定先の会社名を含む個人情報がネットに広まった事例を紹介した。
SNSに投稿された情報が拡散して炎上という流れは、その後も今日に至るまで繰り返し起きている。そしてこの流れは、それまでの「広報」とは異なる対応を迫られるきっかけにもなった。
「個人の問題」が「組織の問題」に
「個人が起こした問題」で、所属組織が注目され、見解を問われたり対応を迫られたりする事件が急増した。それまでの「広報」では、問題の行為が業務に関連するか否かで大きく対応を分けていた。ところが、ネット炎上では、業務に関連するかどうかよりも、所属組織のその問題に対するスタンスが焦点になることが多くなった。
とりわけヘイト投稿(第78回2019年12月号など)は、匿名アカウントであっても本人が特定され、組織が謝罪し、本人を厳しく処分するケースが増えている。「あくまで個人の行為」という姿勢は、解決に後ろ向きというメッセージになってしまう難しさがあり、場合によっては、組織として正確な情報をつかむ前に、メッセージを発する決断を下したり、流れ出た情報がネットに残り続けるという性質を理解した上で対応するようになったのは、この約10年での大きな変化だろう。
無視できなくなったSNS
SNSの不適切な利用を防ぐため、社内のルールづくりや研修教育も一般化した。第72回(2019年6月号)では、入社予定の内定者によるツイートを不適切と見た就職先の研修担当者が、会社の公式アカウントから注意を促したところ、公開説教だなどと注目を集めた事例を取り上げた。

