企業にとって人材戦略は重要な反面、最近では「45歳定年説」が議論になるなど、課題も多い本テーマ。一方、DXの言葉の浸透に伴い、よく耳にするようになったのが「リスキリング」。いわゆる企業に所属しながら新たなスキルの獲得を目指す流れだ。この潮流を起点にした人材戦略やその広報施策について4者に語ってもらった。
これまでと異なる教育
─まずは経済産業省としての「リスキリング」の定義を教えてください。また、省内で行われている企業支援の取り組みについても教えてください。平山
:我々が定義する「リスキリング」とは、新しい職業に就くため、あるいは今の職業に必要とされるスキルの大幅な変化に対応するためにスキルを獲得することです。個人においては自らスキルを学ぶことであり、企業としては従業員にスキルを獲得させていくことです。
DXを推進していく上では様々な課題があるのですが、特に人材に関する課題が重要だと感じます。人材育成については、「リスキリング」というワードが世に出る以前から課題でした。ただ、現状がこれまでと違うのは、社会やビジネスがデジタルによってこれまでにないほど大きく変革している、ということ。その点を踏まえると、人材育成施策を従来の「学び直しが大事」という延長線で考えるよりも、「リスキリング」という新たなワードと概念で捉え直す必要があると考えています。
経産省が取り組むリスキリングの施策としては、学習環境を拡充する支援という観点から「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を2017年度から行っています。こちらはITやAI、データサイエンスなど将来の成長が見込まれる技術領域において、一定レベル以上にある人材のキャッチアップを図ろうという試みです。現在では、経産大臣が116講座を認定し、厚労省の提携により受講費用の50%が支給されるなどの教育給付金制度を利用することができます。

