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コラム

編集者の「返信」の極意

1個ずつ、相手が食べ終わったら渡していく感じ。―竹村俊助さんの返信術

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WORDS
代表取締役
竹村俊助氏

WORDS代表取締役。経営者の顧問編集者。ダイヤモンド社等を経て2018年に独立。『メモの魔力』前田裕二著、『福岡市を経営する』高島宗一郎著、『佐藤可士和の打ち合わせ』佐藤可士和著など書籍の編集・執筆。著書に『書くのがしんどい』(PHP研究所)。

 

作家や漫画家などクリエイターたちの想いを最初に受け取るのは、一般的には黒子と言われる編集者です。
「自分のアイデアが本当に受け入れられるだろうか?」「もっと良いアイデアはないだろうか?」…など、常に不安と戦いながら創作活動に勤しむクリエイターにとって、作品が形になるまでの間に編集者との間で行われるコミュニケーションは、時に心の支えになるものです。
クリエイターをモチベートする編集者は、日々形のないゴールの見えない創作活動においてどのようなコミュニケーション、特にフィードバックを行っているのでしょうか。プロフェッショナル編集者の「返信」の極意に迫ります。

―フィードバックで普段意識していることはありますか。

「あなた自身や人格に対して言っているんじゃない。あなたがアウトプットした文章に対して言っていることなので、そこはあらかじめ理解してね」。これは先に相手に言うようにしています。「ここがおかしい」「ここが読みにくい」とフィードバックすると、相手は自分が責められていると感じて不快な思いをしたり、場合によってはトラブルになってしまうこともあります。でも、あくまでアウトプットに対して僕はものを言っている。だから、そこはわかってください、とまず相手に伝えるのです。

あと、フィードバックするときは、「あまたいる読者の代表として僕が思ったこと」という立場で伝えることを心掛けています。「このタイトルだとクリックしないな」とか、「読み始めたけれど途中でダレて最後まで読めなかったよ」とか。「読者代表である自分」が思っていることは、きっと多くの読者もそう思うはず。ツイートを添削するときも、自分なら読むか、本当に面白いと思うか、リツイートするか、シェアしたくなるかといったことを問いかけます。「逆に、〇〇さんならこれ読みます?」は、言うと刺さる人が多いですね。あとは、「この情報をわざわざ5分くらい時間を割いて読む?」と聞くと、「いや、そこまでではないです」みたいなこともよくあります。いったん冷静になって考えてみるとけっこう気づくので、「もうちょっと簡潔にしよう」「前半は思いきって削ろう」といったことが見えてきます。

―竹村さんは社内でもフィードバックをする立場でもありますが、スタッフの方たちとのコミュニケーションで意識していることはありますか。

ポジティブなフィードバックから入ることです。人間って、放っておくと粗探しするなと思って。たぶんこれ、本能だと思うんです、原始時代からの。腐ったものを食べたら死ぬわけだから、匂いを嗅いで「これ変な匂いするね」と違和感に気づくのが人間の本能。放っておくと全部ネガティブなフィードバックになっちゃう。それはしょうがないけれど、社会は人間的な営みだから、あえてポジティブなことを言おうと意識しています。

例えば、まずできているところを褒める。「この文章よかったよ」「ここは読者も共感してくれると思うよ」。すでにできていることは、みんなスルーしがちだけれど、本来は褒めるべきところだから、そこはちゃんと言うようにしています。

あと、「フィードバック」という呼称も、ちょっとダメ出しっぽく見えるから、社内では「改善提案」と言っています。「またダメ出しされそう」と思うと怖いし、「フィードバックお願いします」って言いづらい。でも、「これは改善提案ですよ」と枠を作っておけば、提出する側も「どう改善すればより面白くなるか」の提案だから受け入れやすいですし。こちらも、何を言っても改善提案になるから言いやすいんです。

―電話や対面で伝える/メールなどのテキストで伝える、どちらが多いでしょうか。
最近はテキストばかりで、メッセンジャーでやりとりすることが多いです。テキストをちょっとずつ分けて出せるのが会話に近い感じがして、コミニケーションツールとして使いやすい。言いにくいことがあっても、「あのう…」だけ送れば、相手から「え、何ですか?」と返ってきて、「ちょっと言いにくいけど、〇〇なんです」、「あーなるほど」と会話のようになる。

感情に訴えたいんですよね。感情を編集したいというか。言いたいことはたくさんあるにしろ、1個ずつお団子を渡していく感じ。やっぱり一気に20行くらい来るとウッとなるじゃないですか。一気に渡すと向こうは胸がつかえちゃうので、1個ずつ、相手が食べ終わったなと思ったら渡していく。それに、相手がどう思うかを逆算して、「ここは『いいね』だけでいいや」「ここは長文でいいか」といった計算もしやすい。グループで人を増やしたり減らしたりも簡単にできるし、マンツーマンでも話せるからフォローもしやすい。メッセンジャーは、仕事とプライベートの間くらいのちょうどいいツールだなと、現時点では思っています。