毎年、約173カ国から参加する巨大なイベントだが、もともとCESは家電ショーとしてスタートした。しかし今日ではテクノロジーとイノベーションのイベントに変化を遂げている。CESでは、スマート家電に始まり、モバイル、自動車、ロボティクス、IoT、AI、XR、そしてWeb3や環境に至るまで、先端的な取り組みに触れることができる。ここで触れることができるテクノロジーは、産業からビジネスモデル、ライフスタイルを大きく変化させることは間違いなく、マーケターにとっても注目すべきイベントだと言える。
コロナ禍を超えて久しぶりに、現地より「アドタイ」視点で、森直樹氏が最新情報をレポートする。
今年のCESでは、1月3日のメディアデイにJETRO主催の日本のスタートアップピッチがあり、非テック企業のサントリーや、エネオスが出展するなど、日本企業参加の裾野が広がり始めていると感じた。CES2023現地レポート最終回となる5回目は、参加の裾野が広がる日本企業の発信にフォーカスしてお届けしたいと思う。
福岡市が官民一体で取り組むFUKUOKA Smart EASTが出展
まず、まちづくりの様々な課題を解決しながら持続的な発展を実現するため、未来に誇れるモデル都市を創造することを目的する、福岡市が官民一体で取り組む、FUKUOKA Smart EASTによる出展から紹介する。
福岡市は以前よりスタートアップ育成やシリコンバレーとの繋がり強化などに対して、積極的な取り組みをする自治体で筆者も関心を持っていた。展示スタッフの方にインタビューをしたところ、新しいスタートアップとの出会い、繋がりを求めて出展したとのこと。韓国や、フランスなどは国が力を入れてスタートアップ育成やCESへの出展支援などを行っている。日本でも国のみならず自治体や官民一体でのこうした取り組みが増えていくことは、起業を目指したり、米国スタートアップエコノミーとの連携を志向する企業にとってもよい流れではないだろうか。
初出展でパートナー開拓や投資先ベンチャー企業を後押しするENEOS
次に紹介するのは、ENEOSだ。ENEOSは小型・省電力、Bluetooth対応の二酸化炭素検知センサーや、EV対応のエンジンオイルを出展していた。また、同社のCVCが出資するスタートアップもENEOSブースで出展。取材に対して、二酸化炭素センサーはすでに実用化しており、広く認知を得る機会や採用を検討してもらえるパートナーの開拓が目的とのこと。またEV対応のエンジンオイルは、車種によってオイルをつくり分けており、ここでも認知拡大やパートナー開拓を期待しているとのこと。出展目的が明確で、なおかつユニークな製品展示がなされている点に好感が持てた。
自社開発のプロトタイプを出展するサントリー
最後に、こちらも初出展のサントリーを紹介したい。サントリーは脳波、心電、筋電といったバイタル情報を計測し、身体の老化の状態を推定するウェアラブルデバイスや、飲料に文字やイラストを3Dで印刷できる3Dフードプリンターを出展。ウェアラブルデバイスは自社開発で、同社ではこうしたIoTデバイス開発のためにエンジニアなどの採用を強化しているという。

