名前だけを覚えてもらうことには価値はない
――書籍のテーマとして「パーセプション」に着目したのはなぜですか。
本田
:今回出版した『パーセプション市場をつくる新発想』は、2019年からパーセプションをテーマに取材を重ねてきた連載をまとめたものです。私はPRの専門家として25年近く、プレーヤーとして活動してきましたが、「パーセプション」という言葉はPRの領域で使われることが多い印象です。
私はパーセプションを「認知」ではなく「認識」と定義しています。「知っている」ではなく、どうとらえているか。企業やブランド側からすれば、客観的にどう見られているか、そこが一番のポイントです。
本書にも記している「Perception is Reality(客観的な認識こそが現実)」は、世界的なPR業界でもよく聞くフレーズです。PRは一方的な発信ではなく、メディアなど第三者との関係をいかに築いていくかという発想に基づいているため、第三者によるパーセプションを理解せずに活動することはできません。だからこそPRのプロフェッショナルはパーセプションに対する意識も強まるし、言葉もよく使う。日本で広まったのは音部さんが提唱する「パーセプションフロー・モデル」がきっかけではないでしょうか。
近年、ブランド過多の市場環境で、認知向上も大事なことですが、自分たちをどう伝えるのかが重要になっています。お客さまからどう見られているのかを把握しておかないとPR活動はもちろん、マーケティング活動も行き詰まるという状況にあり、パーセプションへの注目度も上がってきたと考えています。
音部
:私が「パーセプションフロー・モデル」の原型といえるものをつくったのはもう25年以上前のことで、「パーセプション」も当時から使ってきました。そのことは2021年12月に発行した書籍『The Art of Marketingマーケティングの技法』に記した通りです。
何かを好きになるとき、普通はその名前を知ってから好きになるのではなく、好きになってから名前を覚えますよね。少なくとも私自身、名前だけ覚えてもらって、好きにつながったという経験はありません。無駄とまでは言いませんが、名前しか知らない認知は無価値じゃないでしょうか。
