インターネット広告がマス4媒体総計の売上を追い抜き、さらに成長を続けています。この広告市場のなかで、マスメディア企業はどのような戦略を描いているのでしょうか。
昨今、マスメディア企業のデジタル・トランスフォーメーションを模索する動きは、加速しています。それでは、デジタル化の先に、どのような事業戦略、ビジネスモデルが見いだせるのでしょうか。
「Advertising Week Asia 2023」に登壇するメンバーを中心に、マスメディア企業で広告ビジネスにかかわるキーパーソン4名に一問一答形式で回答してもらいます。
1つ目の質問のテーマは「新たな広告商品の開発と活用できる資源」。「回答者の皆さんが所属する企業や業界が持つ、これからの時代において新たな広告ビジネス開発の資源として活用できるものは何だと思いますか?」との問いを投げかけます。
Quesiton:【新たな広告商品の開発と活用できる資源】
貴社が属するメディア業界、それぞれの企業が持つ、これからの時代において新たな広告ビジネス開発の資源として活用できるものは何だと思いますか?
【長崎氏のAnswer】
講談社
ライツ・メディアビジネス局 局次長
兼 メディア開発部 部長
皆さんは「ロボット工学三原則」をご存知でしょうか?これは70年以上前に、SF作家である、アイザック・アシモフによって提唱された概念です。要約すると、こんな内容です。
第一条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。
第二条:ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
第三条:ロボットは、前事項に反するおそれのないかぎり、自己を守らなければならない。
私たち出版社のメディアは、そのコンテンツを基点としながら、各時代のテクノロジーとともにかたちを変え、届け方を変えてきました。現在の講談社においては、ユーザーとの接点の過半数はオンライン上にあるといえます。
さて、今回のお題である、新たな広告ビジネス開発の資源として活用できるものは「時間」だと私は考えています。来るべきオートメーション化、例えば「自動運転」や「生成AI」が生み出す最大の価値は時短であり、新たな可処分時間です。車中でドライバーに与えられるのが余暇時間であり、省力化によりエディターに与えられるのが創作時間であるならば、コンテンツを中心にした新たな循環システムが出来上がります。ただし、それを生かすも殺すも、メディアと新たなテクノロジーを繋ぐ、普遍の三原則の存在なのだと思います。先ほどの三原則の「ロボット」を「生成AI」に、「人間」を「メディア」に置き換えるとこうなります。