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メディア横断の統一指標が求められるいま、各メディアは独自性をどう発揮すべき?―「Advertising Week Asia2023」連動企画④

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ニューヨーク、ロンドンをはじめとした世界6大陸で開催されているマーケティング&コミュニケーションのプレミアイベント 「Advertising Week(アドバタイジング・ウィーク)」のアジア版である「Advertising Week Asia(アドバタイジング・ウイーク・アジア)」が6月6日から開催される。2004年に米国・ニューヨークで始まった「Advertising Week」は、2016年から東京を舞台に「Advertising Week Asia」が開催され、今回は連続7回目の開催にあたる。「Advertising Week Asia」のアドバイザリーカウンシルメンバーや、登壇するスピーカーをはじめとする4名に「メディアと広告ビジネスの近未来」をテーマに、3つの質問を投げかける。

ロゴ Advertising Week Asia(アドバタイジング・ウイーク・アジア)
「Advertising Week Asia2023」は6月6日~8日の開催。

インターネット広告がマス4媒体総計の売上を追い抜き、さらに成長を続けています。この広告市場のなかで、マスメディア企業はどのような戦略を描いているのでしょうか。

昨今、マスメディア企業のデジタル・トランスフォーメーションを模索する動きは、加速しています。それでは、デジタル化の先に、どのような事業戦略、ビジネスモデルが見いだせるのでしょうか。

「Advertising Week Asia 2023」に登壇するメンバーを中心に、マスメディア企業で広告ビジネスにかかわるキーパーソン4名に一問一答形式で回答してもらいます。1つ目の質問は「新たな広告商品の開発と活用できる資源」

2つ目の質問は「パブリッシャーとエージェンシーの関係」でした。

3つ目の質問は「統一指標と各メディアの独自性」についてです。広告主側が期待する複数メディアを横断した統一指標の整備。こうした期待の中で、個々のメディアならではの強み、独自性をどのように打ち出していくべきか。4人の回答者の見解を聞きました。

Q3:【統一指標とメディアの独自性】

広告主側からは、複数メディアを横断して効果を比較できる統一指標の整備をしてほしいという声も聞こえます。しかし、メディア側としては同じ1インプレッションで表現されたとしても、定性的な面も含めると、その価値は大きく異なる、メディア、ビークルごとの特性をしっかりと理解してもらいたいところではないかと思います。各メディア、ビークルの特性・強みをどのようにクライアントに対して訴求していくべきだとお考えでしょうか。

写真 人物 個人 長崎亘宏氏

講談社
ライツ・メディアビジネス局 局次長
兼 メディア開発部 部長
長崎 亘宏 氏

【長崎氏のAnswer】
少し前に「VUCA(ブーカ)時代」という言葉が頻繁に使われていました。主な解釈は予測困難な時代。これは私の意見ですが、メディア業界にとっての現在は「VAGUE時代」だと考えています。「VAGUE」は直訳すると「あいまいな、はっきりしない」となります。つい先週、博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所より「メディア定点調査2023」が発表されましたが、スマホなどのデジタルデバイスへの一日当たりの総接触時間は、256分。全体に対して約58%のシェア率でした。ところが、コンテンツベースで捉えると、この数字の中に、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の各メディアへの接触時間も含まれています。一方で、テレビ機器のインターネット接続率は過半数を超えており、AbemaなどOTTメディアのコンテンツが日常的に視聴されています。いわば相互乗り入れの状態。そのような環境になってくると、ディバイスベースになっていた従来のメディアプランニングや評価指標を根本的に見直す必要が出てきます。

先日、米国と日本のデジタルメディアプランニングの考え方を比較する調査結果を読む機会がありましたが、大変興味深い内容でした。「最も重要なKPIは?」の問いに対して、米国での回答の第1位は「ROI/ROAS」、日本は「コンバージョン」でした。同じく「ブランド戦略」と回答した順位は、米国が第3位、日本は10位以下でした。

ちなみに、日経広告研究所による最新の「広告主動態調査」においては、722の国内広告主企業を対象とした「広告活動において重要な問題は?」の問いに対する回答の第1位が「長期的な視点に立ったファンづくり」となっていました。

さらに、ユーザーはインターネット広告をどう見ているのか?それをここで詳しく書く必要はないでしょう。ここで明確になるのは、広告主企業の理想と現実のギャップ、パーパスとメディアプランニングの間のパラドクスです。

そこで、私が皆さんと共有したいのは「広告効果=『認知(リーチ)』±『受容性(深度)』」という新たな考え方です。これまでは「認知」という作用は論じても、「受容性」という反作用が語られる機会が少なかったと感じています。これらを相殺した絶対値が本来の広告価値ではないでしょうか?そして、それを広告主、広告会社、メディアが共有していくためには以下の環境整備が必要だと考えています。

①デジタル環境において、メディアをコンテンツ基点で再定義する。
②広告フォーマットをメディア出自にかかわらず、UX視点により区分する。
③認知(リーチ)と受容性(深度)を可視化する。

最後に宣伝になりますが、今回のAWAで私は「デジタル広告再考『リーチ』と『受容性』の黄金比はあるのか?」というプログラムに参加しております。多くの皆様にご視聴いただき、ご意見をお寄せいただけたら幸いに思います。


写真 人物 個人 神田竜也氏

J-WAVE
取締役
神田 竜也 氏

【神田氏のAnswer】
広告計測指標として1impのような統一された指標は必要であると思います。

ただし、プラットフォーム側からの視点で全てが同じ価値換算になるのではなく、企業の広告効果として有益な評価であることが必要であると考えます。

例えば、音声メディアが持つオリジナル音声コンテンツの活用、またはオリジナル音声コンテンツを制作し、リニア(放送)のみならずポッドキャストとしての配信を連動、さらに企業の自社サイトでの配信などで、コンテンツブランドストーリーとクライアントが持つブランド・プロダクト・サービスのストーリーのマッチングが出来ればどうでしょうか。

音声コンテンツとしては、その価値を循環させることにより、ダッシュボードだけでない価値定義として、リスナー属性と企業サービス、商品と近いコミュニケ―ションが取れるのではないでしょうか。

企業のコミュ二ケーション活動に対して、音声コンテンツや音声広告に具体的な役割を持たせることで、広告会社や企業に理解を促進していく。さらに企業に対して、メディアやビークルの特性や強みを明確に伝えるだけでなく、コミュニケーション戦略や目的に合わせたカスタマイズや提案を行っていく事も重要だと考えています。


写真 人物 個人 牧江邦幸氏

日本経済新聞社
執行役員 メディアビジネス担当
牧江 邦幸 氏

【牧江氏のAnswer】
広くあまねく個人の購買行動を促すB2C商品・サービスの場合は、統一指標によって広告展開を効率化することができると思います。反面、勤務先で企業としての購買行動を促すB2B広告、あるいは、B2Cでも富裕層にターゲット絞った高額商品の広告は、そもそも訴求対象が絞られるため、統一指標によってキャンペーンを効率化することはできないですよね。

ご指摘のとおり、1imp、1IDという平面的な指標では、受け手の情報の受容性の高さは測れないということになります。統一指標とは、少し異なりますが、日経広告研究所が中立的な立場から「生活者のメディア利用と情報価値志向に関する調査」を実施しています。この調査では、「コンテンツメディア」と定義される4マス媒体、「プラットフォームメディア」といわれるSNS、動画投稿共有サイト、ポータル・検索サイトのニュース、「人」がインターネットで発信する情報、「企業」がインターネットで発信する情報。これら全てをメディアと捉え、メディアの利用目的やコンテンツの接触状態など分析した結果、6つの異なる生活者群の存在が明らかになりました。会員向けの調査ですが、広告コミュニケーションの効率化にも役立つのではないかと思います。


写真 人物 個人 櫻井順氏

LIVE BOARD
代表取締役社長
櫻井 順氏

【櫻井氏のAnswer】
同じメディアだとしても、1impの価値は広告の露出環境によって異なり、テレビ業界でも、デジタル業界でもその議論は長年なされて来たと思います。

視聴率やインプレッションは量を図るモノサシであり、質を図るモノサシについて、統一見解がないことはある程度、仕方がないことかも知れません。

広告主のキャンペーンにおけるKPIはそれぞれ異なり、その広告主や担当する広告会社の中に質に関する知見が蓄積されていると思います。

OOH業界においては、OOHメディアの中でも屋外広告、交通広告すら横断して媒体価値を比較できる統一指標がなかったこともあり、LIVE BOARDはその解決にいち早く着手し、実現した企業です

OOHメディアは他のメディアと比べて街の環境、媒体のサイズや機能、また、その設置環境などによって特性が全て異なるという特殊なメディアなので、その中で各ビークルの特性・強みがデータでどう可視化するかは、LIVE BOARDもまだ部分的にしか実現できておらず非常にやりがいのある領域だと捉えています。

それが実現できれば、世界的にも日本においても市場の全メディア予算の中の6%と言われるOOH比率が10%以上に押し上げることが可能になっていくと考えています。

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回答者4名のプロフィールはこちら記事にて紹介。

メディア企業のキーパーソンに聞く広告ビジネスの近未来 「Advertising Week Asia2023」連動企画①