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「引き算」が大切 NewsPicks Studios CEO金泉俊輔氏の編集観

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メディアで仕事をする人にとって必要な能力のひとつ「編集力」。しかし、ビジネスの世界の意思決定はすべて適切な情報編集の先にあると考えると、広告・マーケティングの領域においても、表現力だけでなく情報の取捨選択・整理といった編集力が必要なのではないでしょうか。月刊『宣伝会議』では、出版業界の編集者の方はもちろん、広義の意味で編集力を生かしている方に、編集術に対する考えを連載として聞いています。今回は、NewsPicks Studios CEO/NewsPicks(プレミアム事業・パブリッシング担当)/編集者 金泉俊輔氏の「編集術」。

※本記事は 月刊『宣伝会議』9月号 に掲載されています。ご購入はこちらから。

人物 金泉俊輔氏

NewsPicks Studios CEO
/NewsPicks(プレミアム事業・パブリッシング担当)/編集者
金泉俊輔氏

雑誌ライターを経て、出版社入社。オンラインサイト『日刊SPA!』創刊編集長、『週刊SPA!』編集長、『NewsPicks』編集長を歴任。2021年より現職。

足して、掛けた後に「引き算」する力

編集とは何かと考えるとき、「異なる種類の物事を足したり、掛け合わせたりして新しいものをつくること」と聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。私の編集観もそれに近しいものなのですが、前述した編集の定義の中で目を向けるべきなのは、新しいものをつくり、物としてアウトプットする前に行われる「引き算」のアクションです。

「引き算」とはどういうことか。まず、皆さんが思うメディアの編集をイメージしてみてください。取材したり、撮影したり、いろいろな物事を足し掛けしていって、ひとつのコンテンツにしていることは想像がつくと思います。

ですが、コンテンツを届けるためにはコンテンツを載せる乗り物が必要です。ここで言う乗り物とは、テレビや雑誌、SNSプラットフォームなどのメディアの存在。そう考えると、メディアと言われるものには、スペースや時間など、載せられる容量に制限がある場合が多いことがわかりますよね。つまり、メディアには、足し掛けしてつくったコンテンツをすべて載せられるわけではないということ。ここで必要になるのが「引き算」のアクションなのです。

足して、掛けて、新しいものをつくった後に、何を残して、何を削るのか。要は「メディアに載せて何を伝えるべきか」という取捨選択や引き算ができる力こそ、私は「編集力」なのではないかと考えています。

きっと、マーケターもクリエイターも広報担当も、メディアという広告枠やSNSのような制約が設けられたスペースに、「もっとも伝えたいこと」を残して載せるはずですよね。そこで、いわば無意識的に行われているのが「引き算」なのです。

そう考えると、編集で求められる必要なスキルは『宣伝会議』の読者である皆さんも知らぬ間に活用しているのではないでしょうか。そして、この編集力が生活者に何かを伝える際の肝になっていることもわかるはずです。

「新規性」を見つけるには自分の中の違和感を理解すること

とはいえ、アウトプットとして出す前には企画を立てるという行為が必要不可欠です。前に述べた言葉に置き換えると、「足し掛け」の部分のことですね。引き算をする前に、素材となる良い企画をつくっておく必要があります。私の考える良い企画は、「時事性」「新規性」「批評性」の3つが備わっているものです。

「時事性」は文字どおり、まさに今の世の中で起こっていることやトレンドに乗っかること。「出すなら今だ!」という賞味期限が短めのものです。社会が興味・関心のあるテーマを取り上げるので、話題になる可能性は高いと考えられそうですよね。

しかし、社会の話題に乗るだけでは、他が出している企画と似たものにならざるを得ません。ここで必要なのが「新規性」。何かの物事に対する、新しい切り口や視点のことです。

この「新規性」を見つけるためには、何でもいいからモノやコトを体験してみて、自分の中に生じた違和感や疑問を理解することが必要です。

例えば、「一般的には常識と言われているAという事象。なんかモヤモヤする」とか「このBという環境、なんとなく居心地良くない」みたいな。「なぜか、違和感がある」というもの。いわゆる、常識を疑うことで生じる感情を捉えるんです。

この、ある事象に対して持った違和感こそ「新規性」のタネ。まだ誰も言語化していない、新しい切り口となるものです。言い換えると、インサイトですね。顕在化していないニーズです。自分の中に生まれた疑問を突き詰めて、その理由や背景、要因を理解する。そして、徹底的にリサーチして理解した違和感の結果を、言語化して世に出す。こうして完成した企画は世の中に新しい切り口を提示した「新規性」のある企画と言えると思います。

加えて、企画から「新規性」を感じさせるためにはストーリーや構成も必要です。要は、言語化したときに、どのように伝えるかです。

スライド 金泉俊介が考える「編集」とは

メディアがトレンドをつくることができる理由

「新規性」のある企画は誰かからの共感を得られることもある一方で、「批評性」が同時に生まれることもあります。「私は違う意見だ」というように、企画が起点になって議論が巻き起こるイメージです。このような企画は、否定意見を言われていたとしても、良い意味で「自分ごと化」されているとも言えますよね。自分にも関係があることだと、思わせられている良い企画です。

「批評性」は、「新規性」のある視点を言語化して世の中に放ったからこそ起きるもの。言い換えると、「みんながもともとボヤっと思っていたけど、明文化されてこなかったあれこれ」を市場に提示したことによって、社会での話題のタネになったと言いますか。ひとつのトレンドをつくるとも言えるかもしれません。

しかし、どれだけ「時事性」を考慮して企画を考えても、――

――本記事の続きは、月刊『宣伝会議』9月号にてお読みいただきます。

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