メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

グローバルマーケティングウォッチ

2028年、世界の3分の1以上の世帯が所有するスマートホームデバイスはコミュニケーションチャネルとして活用できるか?

share

家庭内にある機器をネットワーク化し、スマートフォンなどでの簡易なコントロールを可能にするスマートホーム。スマートスピーカー、サーモスタット、コネクテッドセキュリティシステムなど、スマートホームの環境を構築するために必要な「スマートホームデバイス」は、その利便性により世界中の消費者の間で人気が高まっている。また、家庭内に常につながった状態であるデバイスを利用し、ブランドが消費者と継続的につながる新たな手法にもなりつつある。
 
今回は、グローバルメディアエージェンシーIPG Mediabrands のニューヨーク本社でメディア戦略を担当する副島奈美氏が、同エージェンシーのイノベーション部門IPG Media Labのジョシュア・マラリューのレポートを基に、成長を続けるスマートホーム市場の動向を説明する。

スマートホームデバイスの世帯普及率、デジタル先進国では4割を超える

ドイツに拠点を置く調査会社のStatistaによると、2023年には世界の世帯の約16%がスマートホームデバイスを利用しており、イギリス、アメリカ、韓国などのデジタル先進国ではすでに世帯普及率が40%を超えている。そしてスマートホームの普及率は今後も上昇が見込まれており、2028年までに世界の3分の1以上の世帯がスマートホームデバイスを所有すると予測している。

グラフ その他 スマートホームの世帯浸透率

Amazonが市場を牽引するスマートホーム・メディア

成長を続けるスマートホーム市場を牽引するのが、スマートホームデバイスを提供するAmazon、Google、バイドゥ、アリババなどの大手テクノロジー企業だ。各社が激しいシェア争いを繰り広げているが、現状ではスマートホーム機器で中心を担うAIアシスタント搭載のスマートスピーカー「Alexa」を展開するAmazonが世界の市場で普及台数の面で他社をリードしている状況だ。ビッグテックをはじめとしたこれらの企業は、広告、コンテンツ、サービスを消費者に届ける新たな手法としてスマートホームをコントロールすることを目指している。

マーケットを牽引してきたAmazonは、すでにスマートホームデバイスを生活者につながる新たなコミュニケーションチネルとして広告主に提供している。具体的にはAlexaを利用したスポンサー広告、音声データを使用したプログラマティックターゲティング、ブランド独自のAlexaスキルなど、いくつかのオプションを提示している。

また、数年前にスマートスピーカーTmall Genieを発売し、中国を中心にシェアを拡大しているアリババは、オンラインショッピング、エンターテインメント、ライブストリーミングを提供し、ユーザーに幅広い体験を提供するとともに、新たなブランドパートナーシップへの扉を開いた。

グラフ その他 メーカー別スマートスピーカーの出荷シェア

相互運用性規格Matterなど、ブランドがスマートホーム・メディアを活用するには?

ブランド側が、スマートホームデバイスを生活者とつながる新たなコミュニケーションチャネル、メディアとして活用するためには、いくつかの手法が考えられる。

ひとつは、音声検索向けにコンテンツを調整することで、検索エンジンの最適化(SEO)を実施すること。そのためには、Googleマイビジネスなどを活用し、音声検索用にビジネスをリストアップしたり、会話形式の質問に合わせてコンテンツを調整したりするなど、細かい調整が必要になってくる。また、スマートスピーカーで人気のあるポッドキャストやストリーミングオーディオプラットフォームのコンテンツをスポンサーすることも、今後重要になってくるだろう。

また、ブランドによってはスマートホームデバイスを介して利用できる自社独自のサービスやスキルの作成に挑戦するのもよいだろう。サービスやスキルを作成する手法はすべてのブランドに適しているわけではないが、Dominoのピザデリバリーアプリ、IllyのBaristaスキル、Fitbitのヘルスアプリスキルなど、家庭内で必要なアクティビティーやコンテンツを音声で提供するサービスはスマートホームに適しているといえそうだ。

さらに照明、ロボット掃除機、コネクテッドキッチン家電などのスマートホームデバイスメーカーは、オープンソースの相互運用性規格であるMatterを使用して、他のスマートホームデバイスとの相互運用性を確保し、コネクテッドホーム内のすべてのデバイスとシームレスに連携できる。

MatterはAmazon、 Google、 Apple、Samsungなどメジャーメーカーがすべて採用している規格で、Wi-Fiなどを通じて家庭内にあるすべてのデバイスをコントロールできるようになる。2022年にローンチしたMatterは、まだ開発途中ではあるが、今後の展開が期待できる。

このように、成長が期待されるスマートホーム市場ではあるが、課題もある。スマートホームデバイスを通じて収集されたデータをオーディエンスターゲティングや広告に利用することは、プライバシーに関する懸念があるため、注意が必要である。進化途中のスマートホームデバイスを効果的かつ安全に活用するには、これらの規制に関する継続的な監視と学習が必要となる。

まだ変化し続けるスマートホーム市場ではあるが、今後成長することは確実だ。ブランドにとってますます重要なコミュニケーションチャネルとなることは間違いないだろう。

IPG Mediabrands
副島奈美

米イェール大学で政治経済を専攻。その後東京のソニーに就職し、本社スタッフとして東京・NYオフィスで働く。2003年に米コロンビアビジネススクールに進み、MBAを取得。卒業後は戦略コンサルティング会社、デジタル・エージェンシ―を経て、グローバルの大手広告代理店ユニバーサル・マッキャンにてグローバルメディア戦略を担当。

advertimes_endmark