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コラム

すきま時間でちょこっと演習『プロジェクトドリル』

プロジェクトドリル1問目「サッカーの試合に美しく勝利せよ」

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うまくいかないプロジェクトは「成功の定義」が決まっていない

前回、プロジェクトがうまく進まない要因には間違ったKPIを設定していたり、所与の条件を無視して成功事例を鵜呑みにしてしまうことなどがあるとお話ししました。その中でも最も根本的な要因になるのが、「成功の定義が決まっていない」ことです。

初めてのプロジェクトは起案した人も任された人も、「そのプロジェクトがどうなっていたら成功か?」という成功の定義を決めていないか、あいまいです。関わる人ごとに定義がバラバラ、なんてこともあります。

成功の定義がない、あるいはあいまいなまま進むプロジェクトは、メンバー間で認識のズレや齟齬が頻繁に起きます。目標と手段の因果関係があやふやになったり、複数の選択肢から選ばなければいけないとき、判断基準がブレて計画に一貫性がなくなります。作ったものを何度もやり直したり、足の引っ張り合いや衝突も起きます。人々の期待や思惑が入り混じったまま、それらを全て実現しようとすると、お金と時間がいくらあっても満足のいく結果は得られません。

成功の定義はプロジェクトの計画や進め方を規定する非常に重要なものです。成功の定義の表現次第で進め方はガラリと変わります。そこで今日は「成功の定義の言語化ドリル」に取り組みましょう。

 

「成功の定義」を決めるとは、「勝利条件」を設定すること

ドリルはプ譜を用いて出題します。プ譜はプロジェクトの状況や諸要素の関係性を構造化するフレームワークで、「獲得目標」「勝利条件」「中間目的」「施策」「廟算八要素」の5つの項目で構成されています。(詳しい説明については下記の動画をご覧ください)

今回のドリルで考えるのは、「獲得目標」と「勝利条件」の2つです。


パース・イメージ 「獲得目標」と「勝利条件」

「獲得目標」にはプロジェクトで実現したいことや解決したい課題を書き、「勝利条件」には、その目標が「どのようになっていたら成功か?」という成功の定義を書きます。両者は対の関係です(以後、このコラムでは成功の定義を『勝利条件』と呼びます)。

といっても、具体的な話がないと、何のことかよくわからないかもしれませんね。さっそくドリルに取りかかってみましょう。

 

プロジェクトドリル 1問目「サッカーの試合に勝利せよ」

あなたはあるサッカークラブのコーチとして働いています。週末に迎えるリーグ戦は最終節を迎えていますが、これまでチームを率いていた監督がクラブオーナーとの関係悪化から辞任してしまい、シーズン最後の試合はあなたが臨時監督としてチームを率いることになりました。勝っても負けても優勝や降格には影響のない試合です。クラブのオーナーからはとにかく勝って締めくくってほしいとだけ依頼されました。監督となったあなたはどのようにして試合に勝てば、成功したと言えるでしょうか?

「試合に勝つ」という一つの同じ獲得目標に対し、できるだけ多様な勝利条件を出してみてください。


パース・イメージ プロジェクトドリル 1問目「サッカーの試合に勝利せよ」

 

解答例

みなさんはどのような勝利条件を表現できたでしょうか?相手よりも1点多く取っていればいいのだから、「最少得失点差で勝っていれば成功」と定義する人もいれば、クラブの将来を見据えて「若手選手を多く起用して勝っていれば成功」と定義する人もいるでしょう。

勝利条件は定量的にも定性的にも表現できます。攻撃サッカーの信奉者であったオランダ出身のヨハン・クライフは「美しく勝利せよ」という言葉とともに、「私は1-0で勝つよりも、5-4で勝つことを望む」と言いました。チケットを買って観戦に来てくれるファンのために、ハラハラドキドキする点の取り合いをして勝とう、という思想・想いが込められています。一方で、イタリア人は伝統的に1点も入れられず、0点で守り勝つ「ウノ(1)ゼロ(0)」の勝利にカタルシスを感じるそうです。

 

解説

試合に勝つという共通の目標には、実に様々な勝利条件を表現することができます。そして、その表現次第で、どんな選手を起用するか?どんなフォーメーションにするか?前半と後半でどのような作戦を用意しておくか?作戦を実現するためにどんな練習をするか?といったことが変わってきます。5-4で失点のリスクを恐れず攻め込む計画と、1点取ったら自陣に引きこもって守り切る計画とでは、考えることや実行することが同じになるわけがありません。つまり、勝利条件の表現次第で計画はガラリと変わるということなのです。


パース・イメージ 勝利条件の表現

逆の言い方をすれば、勝利条件を決めないと、あらゆる「やったほうがよさそうなこと」を考え実行しなければならず、単純に思考する量や作業量が膨大になってしまいます。量が増えれば複雑さが増し、難易度も上がってしまいます。


パース・イメージ 勝利条件の「無限定」

このような状態を「無限定」と呼ぶのですが、勝利条件には「無限定」を「限定」する機能があるということです。限定することができれば、やらなくていいことはやらずに済みます。

冒頭でも述べた通り、プロジェクトが始まるとき、勝利条件は決めていないか考えもしていないことが多いです。そのため、まずは勝利条件を多様に表現し、そのうちのどれが最も得たい成果なのか?手に入れたい変化なのか?といったことを吟味しなければなりません。そして、勝利条件が複数存在していると各種の問題の原因となるため、関係する人々の間で勝利条件を統一していく必要があるのです。

 

まとめ

  • ✓一つの目標に対し、勝利条件は多様に表現できる(存在し得る)
  • ✓勝利条件次第でプロジェクトの進め方はガラリと変わる
  • ✓勝利条件は一つに設定せよ

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このドリルで参照した書籍・Webコンテンツ

『ヨハン・クライフ「美しく勝利せよ」』(二見書房)

 

『プ譜』についての詳細はこちら

『予定通り進まないプロジェクトの進め方』 (前田考歩・後藤洋平著)

ルーティンではない仕事はすべて「プロジェクト」である――独自のフレームワーク「プ譜」を使って、プロジェクトの状況や諸要素の関係性を構造化し、成功に導くための方法を解説。プロジェクトの全体像を俯瞰し、進行の技術を身につけるための実践書。

「プ譜」の解説動画はこちら

 

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