プロジェクトの症状別 演習ドリルの選び方

プロジェクトマネジメントの問題症候群、心当たりはありますか?

これまでの仕事人生のなかで、みなさんはどのようなプロジェクトに取り組んできたでしょうか?そのプロジェクトは成功裏に終わったでしょうか?

成功していたならば、この記事をお読みになる必要はありません。しかし、もし苦い結果に終わっていたならば、以下の図をご覧になってください。

この図は、筆者がこれまで支援し見聞きしてきたプロジェクトが失敗するまでの事象と原因を「病(やまい)」に見立て、似た症状のものを分類し、いくつかの「症候群」にまとめた「プロジェクトの問題症候群マップ」です。

症状にはそれが起きた原因があり、症状が原因になって別の症状を引き起こします(※筆者注:症候群とは、一つの共通の原因から、いろいろな症状や兆候、それも互いに関係のなさそうなものが、さまざまな組み合わせで起こってくることをいいます)。

例えば、「全体を把握していない」から、「議論が些末」になる。さらに「成功の定義があいまい」なので、「後からやり直しや手戻りが度々発生」します。こうした問題が積み重なって、遅延、品質不足、予算超過といった“プロジェクトの死”に至ります。

これらの症状を起こさないよう、多くの方々がプロジェクトマネジメントの研修を受講したり書籍を読んだりしています。研修や書籍ではプロジェクトマネジメントに必要な思考法が紹介されますが、そこで仕入れた思考法を実際のプロジェクトで試す機会はなかなかありません。

今回、アドタイで連載した「プロジェクトドリル」は、プロジェクトマネジメントに必要な思考法を練習し、これらの病を予防するための机上演習問題として執筆しました。

特に練習機会の少ない「あいまい・多義性症候群」「俯瞰不全症候群」などに効くものになっています。

ここで、みなさんのプロジェクトの病の度合いや可能性をちょっと問診してみましょう。

それぞれの症状に対応するドリルをこれまでの連載の中から紹介していきますので、思い当たるものがあれば、そこから見てみてください。

「あいまい・多義性症候群」におすすめドリル2選

「成功の定義が決まっていない」問題には…

プロジェクトの目標があいまいで何のために行うのかよくわからなかったり、プロジェクトに取り組む際、何から始めたらいいかわからなかったりしませんか?そんな方にお勧めなのが、こちらのドリルです。

※画像クリックでドリルに遷移します(以下同)

目標があいまいなとき、まず必要となるのが「成功の定義」を決めることです。このドリルでは、「プロジェクトの成功の定義を多様に表現する力」や「多様に表現したものから1つを選び取る力」を鍛えます。

「アウトカム・アウトプットの因果関係がわからない」問題には…

未知のプロジェクトを成功させるために、誰しも成功事例を探し求めるものです。でも、事例で紹介されていたツールや手法を採用したのにうまくいかなかった…。そんな経験がある方にはこちらのドリルを。

事例記事などの表面的な情報を鵜呑みにせず、その奥に潜んでいる「本質を捉える力」を鍛えます。

「あいまい・多義性症候群」の随伴症状におすすめドリル2選

「具体的なKPI実現の方法が未定」問題には…

プロジェクトがうまくいっているかどうか。成功しているかどうかを判断するには定量的な指標が便利かつ必要です。でも、その指標を測定するのに時間がかかりすぎて、必要な時に必要な数値がわからないのでは意味がありません。

このドリルでは、「取るべき指標を設定する力」と、その「指標の測定方法を決める力」を鍛えます。

「KPIが先行する問題」問題には…

猫も杓子もKPI。何をするにもKPIを求められる世の中ですが、KPIは達成しているのに、プロジェクトはぜんぜんうまくいっていない…なんてことはないでしょうか。

SaaSの分業体制などで度々話題になるKPIの罠を防ぐための練習には、こちらのドリルがお勧めです。

このドリルでは、「成功の定義を定性的、定量的に表現する力」を鍛えます。

「プロジェクトマネジメント経験不足」におすすめドリル2選

「どの手段を採用すればいいかわからない」問題には…

導入したツールを使いこなすのに時間がかかりすぎたり、費用対効果が合わな過ぎたりした経験があれば、このドリルを試してください。

このドリルでは「目標に対して最適な手段を見極める力」を鍛えます。

「完璧な計画を立てなければいけないと思い込んでいる」問題には…

しっかり計画を立てたつもりでも、いざ始めてみると「こんな大事なものが抜けていた!」なんてことはプロジェクトでは日常茶飯事です。それでもできるだけ事前にヌケモレは防ぎたいもの。そんなトレーニングの入門編として、片手で納豆を食べる計画を立ててみてください。

このドリルでは、「プロジェクトに必要な要素を洗い出す力」と「要素の“あるべき状態”を定義する力」を鍛えます。

「俯瞰不全症候群」におすすめドリル3選

「全体像を把握していない」問題には…

プロジェクトの計画が甘くてヌケモレがあり、それを補完・改善するために思いついたアイデアをすぐ実行したものの、それもうまくいかずに、対処療法的な対応を繰り返した結果、納期と予算を超過してしまった。そんな問題にはこちらのドリルを。

このドリルでは、「プロジェクトを構成する要素を洗い出し」、その「要素を“望ましい状態”にするための施策を選択し、組み立てる力」を鍛え、さらには「洗い出した要素の辻褄に注意して、全体の整合性を取る力」を鍛えることを狙っています。

「全体像を把握していない」問題におすすめの発展版ドリルはこちら。プロジェクトには多くのステークホルダーがかかわっていますが、ひとたび問題が起きると、彼・彼女らの存在を忘れていまい、目の前の問題解決策にすぐ飛びついて、自分の問題だけを解決しようとしていないでしょうか?

このドリルでは、関係者の視点や立場に配慮することができなかったり、俯瞰的な視点で問題を捉えることができない症状を改善して、「多様なステークホルダーの存在を想起する力」と「相反する要求や利害を擦り合わせる力」を鍛えることを目指します。

「優先順位が決まっていない」には…

プロジェクトでは品質、お金、時間、QCD問題が常につきまといますが、それ以外にも「使い勝手」「スピード」「安全性」など、プロジェクトによって様々な要素が存在します。そうした複数の要素のトレードオフに頭を悩ませている人は少なくないと思います。

このドリルでは、「選択肢のメリットとデメリットを整理する力」と、「トレードオフを理解して意思決定する力」を鍛えます。

最後に、「プロジェクトの死」に直面してしまった人におすすめのドリルは

立てた計画を動かしてみたら、現実はぜんぜん違っているのに、なかなか当初の計画を修正・変更できない(したくない)という人は、プロジェクトの失敗可能性がかなり高いです。

また、当初の想定からは思いもよらない事態に陥ったとき、それはリスクでありながらも、その対応次第では、プロジェクトメンバーからの信頼獲得や発展的な成果を手に入れる機会にもなり得ます。

このドリルでは、自分の打った手が想定外の事態を引き起こしてしまったときの炎上鎮火・挽回のシミュレーションを体験することを狙っています。

 

この10問は予防・トレーニングのキッカケを提供したに過ぎないですし、これで問題が全て解決するものではもちろんありません。けれど、10問をコンプリートすることで、日常の出来事や本を読んだりニュースを見聞きしたりするなかでも、「このプロジェクトの成功の定義は何だろう?」と考えたり、「こういうトレードオフがあったかもしれない」などと思えるようになってくるはずです。そうなれば、必要な思考法が身につき始めた証拠です。

このような習慣を積み重ねていくことで、様々なプロジェクトに必要な教訓や原則をみなさん自身が発見するようになってくるでしょう。自分で発見したものは、実際のプロジェクトで何らかの課題に遭遇したとき、「これはどこかでやったことがあるぞ!」とピンとくるものが出てくるはずです。ぜひ、このような境地を目指して、取り組んでみてください。

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前田考歩(プロジェクトエディター)
前田考歩(プロジェクトエディター)

1978年三重県生まれ。平日8:00〜10:00のみ開業の、問いかけと構造化でプロジェクト進行を支援する『プロジェクト・クリニック』を運営。
自動車メーカーの販売店支援・CSR事業、映画会社のeチケッティング事業、自治体の防災アプリ、保育園検索システム、夫婦の育児情報共有アプリ事業、魚の離乳食的通販事業、テレビCM制作会社の動画制作アプリ事業など、様々な業界と製品のプロジェクトマネジメントに携わる。
プロジェクトに「編集」的方法を活かした、プロジェクト・エディティングを提唱、実践中。
著書に『紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本』(翔泳社)、『予定通り進まないプロジェクトの進め方』『見通し不安なプロジェクトの切り拓き方』(宣伝会議)、『ゼロから身につくプロジェクトを成功させる本〜はじめてのプロジェクトマネジメント〜』(ソーテック社)など。

前田考歩(プロジェクトエディター)

1978年三重県生まれ。平日8:00〜10:00のみ開業の、問いかけと構造化でプロジェクト進行を支援する『プロジェクト・クリニック』を運営。
自動車メーカーの販売店支援・CSR事業、映画会社のeチケッティング事業、自治体の防災アプリ、保育園検索システム、夫婦の育児情報共有アプリ事業、魚の離乳食的通販事業、テレビCM制作会社の動画制作アプリ事業など、様々な業界と製品のプロジェクトマネジメントに携わる。
プロジェクトに「編集」的方法を活かした、プロジェクト・エディティングを提唱、実践中。
著書に『紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本』(翔泳社)、『予定通り進まないプロジェクトの進め方』『見通し不安なプロジェクトの切り拓き方』(宣伝会議)、『ゼロから身につくプロジェクトを成功させる本〜はじめてのプロジェクトマネジメント〜』(ソーテック社)など。

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