分相応の手段を選ぶには。プロジェクトドリル02「石化を解く薬を開発せよ」(Dr.STONEからの出題)

本コラムでは、プロジェクトマネジメント力を高めるために必要な思考の型・原則・技法を身につけるドリル(練習問題)を、「プ譜」という共通フォーマットを使用して提供します。出題のネタは、古今東西のビジネス事例、歴史上の出来事、SNSで話題になった事例、マンガなどから幅広くピックアップ。すきま時間で楽しく取り組みながら、プロジェクトの計画立案や意思決定の力を高めることを意図しています。今回は目標と手持ちのリソースとの関係から最適な手段を選ぶ方法について考えます。

今回のドリルで鍛える力(ドリルの狙い)
・目標に対して最適な手段を見極める力


こんな問題に心当たりがある人にお薦め
・間違った選択をして時間や予算を超過してしまう

プロジェクトドリル2問目「石化を解く薬を開発せよ」
難易度★☆☆

ドリルのシチュエーション

今回は漫画「Dr.STONE」からの出題です。あなたは全人類が石化してしまった世界で、科学者と共に石化を解く薬(復活液)を製造していた11歳の少女です。ある日科学者も石化してしまい、薬の製造は少女一人に託されてしまいました。少女は正統な科学技術に関する教育を受けていませんが、科学者の傍らで薬の製造方法を目にしてきました。幸運にも製造用の機械や装置の他、科学者が残してくれた製造工程のメモが残っており、そこに書いてある字を読むことはできます。

復活液をつくる肝となるのは硝酸を手に入れることです。硝酸の製造方法には以下の3つがあります。

  • ① オストワルト法でつくる
  • ② アーク放電による二酸化窒素を生成してつくる
  • ③ 糞を原料にする製法でつくる

薬の開発に3つの選択肢がある構造をプ譜で表現すると下図のようになります。

実データ グラフィック プロジェクトドリル 2問目「石化を解く復活液を製造せよ」

問題

みなさんが少女自身だとしたら、この3つの中からどの方法を選ぶでしょうか?今回はヒントとして、参考情報を2つ用意しました。1つ目はそれぞれの方法のメリット・デメリットを整理した表です。

実データ グラフィック プロジェクトドリル 2問目「石化を解く復活液を製造せよ」 薬の製法

①と②の方法を採用するには、共に科学的な知識や技術が必要ですが、そのぶん早く製造することができます。幸いにもこの方法に必要な器材は残っています。③は動物の糞を集め、1年かけて製造することになるので時間がかかります。

2つ目はプ譜の「廟算八要素」欄に記載いた「人」の情報です。廟算八要素にはプロジェクトに取り組むにあたってのリソース(資源)や置かれている環境などを書きます。人であれば人数や持っている知識や技術を書き、使えるお金や時間などを書いていきます。今回のドリルでは少女の科学リテラシーやスキルがポイントになります。

解答と解説

①と②の方法を選んだ方は、実際のプロジェクトでは予算や納期を超過させてしまう恐れがあります。この演習の元となった物語で、少女は最初に①と②の方法に取り組みますが、操作方法を誤って感電したり製造中に薬品が暴発してしまったりします。いくら字が読めて科学者の製造の様子を見ていたとしても、機材を扱う分相応の知識や技術が伴っていなければ、自分が望む方法を採用することはできないということです。

自分の技術・知識では復活液をつくることはできないと悟った少女は、最後に③の方法を選択します。この方法は専門的な機器の操作を必要としない最も簡単なものでしたが、原料として臭い糞を集めなければいけないことや、生成に1 年かかることから少女が最も採用したくない方法でした。廟算八要素の「外敵」欄に書いた「早くみんなに会いたい」という気持ちも③を最初に選ばなかった理由のひとつです(※「外敵」とはプロジェクトを阻害する有形無形のものを言います)。

生成に1年かかるというのは年に何度もチャレンジできるということではなく、年に1回しかチャンスがないということです。1年目での製造に成功しなかった少女は何度も試行錯誤を経て、結果的に7 年かけて復活液を完成させました。

実データ グラフィック プロジェクトドリル 2問目「石化を解く復活液を製造せよ」

ドリルの教訓

プロジェクトは人材やお金や時間に限りのある「有限有期」の活動です。ドリルの元となった物語では少女以外の人間は石化されており、石になっている分には死にはしないので、時間はいくらでも与えられています。しかし、実際のプロジェクトではあらゆる資源は有限です。自分やメンバーがいくら使用したい手段があっても、知識や技術が追いついていなければ、貴重な時間やお金を浪費してしまうことになるのです。

このドリルで参照した書籍・コンテンツ

『Dr.STONE 22』(ジャンプコミックス)

advertimes_endmark

『プ譜』についての詳細はこちら

『予定通り進まないプロジェクトの進め方』 (前田考歩・後藤洋平著)

ルーティンではない仕事はすべて「プロジェクト」である――独自のフレームワーク「プ譜」を使って、プロジェクトの状況や諸要素の関係性を構造化し、成功に導くための方法を解説。プロジェクトの全体像を俯瞰し、進行の技術を身につけるための実践書。

「プ譜」の解説動画はこちら


バナー 「プロジェクトマネジメント基礎講座」リンク

【書店選書イベントのご案内】

ブックファースト新宿店で、前田考歩さん選書のブックフェアを開催!

「お仕事の具合はいかがですか?症状に併せて処方箋をお出しする”#プロジェクト薬局”へようこそ」フェア

ブックファースト新宿店(新宿区西新宿1-7-3モード学園コクーンタワー地下1階)にて、プロジェクトの進行に役立つ参考書籍200冊を展示。2月16日(金)まで開催中。ぜひお立ち寄りください。

本コラムと連動したリアルセミナーも2月9日開催!詳しくはこちら


 



前田考歩(プロジェクトエディター)
前田考歩(プロジェクトエディター)

1978年三重県生まれ。平日8:00〜10:00のみ開業の、問いかけと構造化でプロジェクト進行を支援する『プロジェクト・クリニック』を運営。
自動車メーカーの販売店支援・CSR事業、映画会社のeチケッティング事業、自治体の防災アプリ、保育園検索システム、夫婦の育児情報共有アプリ事業、魚の離乳食的通販事業、テレビCM制作会社の動画制作アプリ事業など、様々な業界と製品のプロジェクトマネジメントに携わる。
プロジェクトに「編集」的方法を活かした、プロジェクト・エディティングを提唱、実践中。
著書に『紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本』(翔泳社)、『予定通り進まないプロジェクトの進め方』『見通し不安なプロジェクトの切り拓き方』(宣伝会議)、『ゼロから身につくプロジェクトを成功させる本〜はじめてのプロジェクトマネジメント〜』(ソーテック社)など。

前田考歩(プロジェクトエディター)

1978年三重県生まれ。平日8:00〜10:00のみ開業の、問いかけと構造化でプロジェクト進行を支援する『プロジェクト・クリニック』を運営。
自動車メーカーの販売店支援・CSR事業、映画会社のeチケッティング事業、自治体の防災アプリ、保育園検索システム、夫婦の育児情報共有アプリ事業、魚の離乳食的通販事業、テレビCM制作会社の動画制作アプリ事業など、様々な業界と製品のプロジェクトマネジメントに携わる。
プロジェクトに「編集」的方法を活かした、プロジェクト・エディティングを提唱、実践中。
著書に『紙1枚に書くだけでうまくいく プロジェクト進行の技術が身につく本』(翔泳社)、『予定通り進まないプロジェクトの進め方』『見通し不安なプロジェクトの切り拓き方』(宣伝会議)、『ゼロから身につくプロジェクトを成功させる本〜はじめてのプロジェクトマネジメント〜』(ソーテック社)など。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ