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コラム

すきま時間でちょこっと演習『プロジェクトドリル』

成功事例を鵜呑みしてはいけない理由。プロジェクトドリル04「昆虫に花粉を運んでもらうための状態を定義せよ」(自然界からの出題)

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実データ グラフィック サムネイル

本コラムでは、プロジェクトマネジメント力を高めるために必要な思考の型・原則・技法を身につけるドリル(練習問題)を、「プ譜」という共通フォーマットを使用して提供します。出題のネタは、古今東西のビジネス事例、歴史上の出来事、SNSで話題になった事例、マンガなどから幅広くピックアップ。すきま時間で楽しく取り組みながら、プロジェクトの計画立案や意思決定の力を高めることを意図しています。今回も前回に引き続き、みなさんがよく知るタンポポなどの植物を題材に、成功事例を真似てもうまくいかない原因について考えます。

今回のドリルで鍛える力(ドリルの狙い)
成功事例の本質を捉える力

こんな問題に心当たりがある人にお薦め
・成功事例で紹介されていたツールや手法を採用したのに、うまくいかなかった経験がある

プロジェクトドリル4問目「昆虫に花粉を運んでもらうための状態を定義せよ」 難易度★☆☆

ドリルのシチュエーション

今回は自然界の生物をテーマに出題します。花が子孫を残していくためには、甘い蜜をエサにして昆虫を呼び寄せ、花粉を別の花に運んでもらって受粉させなければなりません。花には色々な種類がありますが、子孫を残すための勝利条件は「自分の望む昆虫に花粉を運んでもらうこと」です。

写真 イメージ タンポポとホトケノザ
写真 イメージ タンポポとホトケノザ
タンポポとホトケノザ
Bernard DUPONT from FRANCE, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons

問題

みなさんにはタンポポとホトケノザの2種類の花の立場になってもらい、自らの勝利条件を実現するために必要な状態を定義してもらいます。

回答方法は次の通りです。タンポポの勝利条件は「アブに運んでもらっている」ことで、ホトケノザは「ハチに運んでもらっている」ことです。この勝利条件を実現するために、「花の奥ゆき」「花びらの形」「花の色」「咲く場所」の4つの要素があります。「花の奥ゆき」は昆虫を誘うための蜜の在処でもあります。

写真 イメージ ドリルの回答方法
写真 イメージ ドリルの回答方法

この4つの要素の「あるべき状態」を、以下の状態リストから選んでください。

写真 イメージ アブとハチの特徴比較表

なお、参考情報としてアブとハチの特徴比較表も掲示します。

写真 イメージ アブとハチの特徴比較表

また、「廟算八要素」欄に記載した「競合」の存在にも注意しましょう。同じ黄色い花だからといって、タンポポの花粉が菜の花に運ばれても種子はできません。

解答と解説

以下に解答を掲示します。

写真 イメージ ドリルの回答方法
写真 イメージ ドリルの回答方法

花の色はアブ・ハチの好みを比較表に記載しているので簡単ですね。タンポポの咲く場所はどうでしょうか?アブは知能が低いため、同じ黄色い花でも種類の異なる花に花粉を運んでしまう可能性が高いです。またアブの飛翔能力は低いため、できるだけ密集して咲いていたほうが、間違って他の花に花粉を運んでしまうリスクを低くすることができます。

ホトケノザの咲く場所はどうでしょう?ハチは飛翔能力が高く遠くまで飛ぶことができるので、「離れて咲いている」という状態でも大丈夫です。ハチは自分のためだけでなく、女王蜂をはじめとする家族のためにも蜜を運ぶため、あちこちの花を飛び回って蜜を集めます。植物はそれだけ多くの花粉を運んでもらうことができます。そのためホトケノザは花の形を細長く、奥ゆきを深くすることで、ハチ以外の大きな昆虫を入りづらくさせています。これに比べてタンポポは蜜の在処までの奥ゆきが浅く、花びらも密集しているので、大きな昆虫であっても容易に蜜を得ることができます。

(※筆者注:タンポポの花びらは、正確には1つ1つの小さな花で、それらがたくさん集まって、1つの花のように見えています)

ドリルの教訓

タンポポとホトケノザでは、同じ要素(花の色や咲く場所etc.)を持っていても、状態は異なるということを理解いただけたでしょうか?

中間目的には共通のプリセット(標準的な要素)がありますが、外側の要素は同じでも内側の状態がまったく同じということはありません。同じ目標でも勝利条件は多様に存在するように、中間目的もまた同じ要素でも状態は多様に表現することができます。状態は設定した勝利条件や自社の条件によって変わってくるのです。

成功事例を真似てもうまくいかない理由はここにあります。成功事例に書かれているのと同じツールや手法といった「施策」を用いてもうまくいかないのは、その施策を用いて実現したい要素の状態が、自社の勝利条件にとって「あるべき状態」になっていないからです。世の中の成功事例コンテンツには、「したこと(施策)」と「要素」は書かれていますが、「状態」について書かれたものは多くありません。成功事例を参考にするときは、表面的な情報を鵜呑みにせず、言語化されていない状態を推測して、それが自身のプロジェクトにも適用できるのかを検討する必要があるのです。

 

このドリルで参照した書籍

『雑草はなぜそこに生えているのか』 (ちくまプリマー新書)

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写真 書影 『雑草はなぜそこに生えているのか』

 

『プ譜』についての詳細はこちら

『予定通り進まないプロジェクトの進め方』 (前田考歩・後藤洋平著)

ルーティンではない仕事はすべて「プロジェクト」である――独自のフレームワーク「プ譜」を使って、プロジェクトの状況や諸要素の関係性を構造化し、成功に導くための方法を解説。プロジェクトの全体像を俯瞰し、進行の技術を身につけるための実践書。

「プ譜」の解説動画はこちら


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