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トライアルHDが上場、新店舗拡大やITデバイスに投資

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2024年売上高は前期比8.9%増の約7110億円を見込む

ディスカウントストア「TRIAL」を全国展開するトライアルホールディングス(HD)は3月21日、東京証券取引所グロース市場に上場した。2024年6月期の予想売上高は約7110億6700万円(前期比8.9%増)で、営業利益は185億7500万円(同33%増)。同社は流通小売事業のほか、AIカメラやショッピングカートを扱うリテールAI事業を経営の柱としている。IPOによって調達した資金で新店舗の拡大や設備強化、ITデバイスの開発などに投資する考えだ。


写真 人物 亀田社長(左)と取締役の永田洋幸氏
3月21日に開催した戦略発表会で登壇した亀田社長(左)と取締役の永田洋幸氏

原材料高騰や円安による物価上昇、不安定な世界情勢などで景気の見通しが不透明な一方、コストプッシュインフレの進行や生活必需品を中心とした節約志向の高まりで、ディスカウントストアの需要が増加。2023年6月期(2022年7月~2023年6月)、2024年7~12月の既存店売上は毎月前年超えだった。

「TRIAL」は1992年に1号店を出店。その後、ITバブル崩壊で多くの小売業者が破綻したことで空き店舗が多数生まれ、同社は居抜き出店によって少ない初期投資で店舗数を増やし、2000年から23期連続増収となった。亀田晃一社長は「居抜き出店はエリア出店や店舗サイズの標準化もできないが、投資効率は極めて高かった」と話した。

2010年くらいから新築店舗の出店を推進し、生活必需品をそろえる郊外店「スーパーセンター」の業態を拡大した。現在の主力業態で、2023年12月時点で183店を出店している。ほか九州を中心に、食品から趣味嗜好品を扱う地方都市店「メガセンター」(24店)、食品中心の「smart」(68店)、より小規模な「小型店」(36店)の4種のフォーマットで全国に店舗を広げている。

「TRIALはローコストオペレーションで価格が安い点や、生活必需品が1店でそろう『ワンストップショッピング』で過不足なく展開していることが強み」と亀田社長。ここ3年間では生鮮食品と総菜の販売が好調で、ミシュランの星を獲得したレストランのシェフによる調理が評価されている。現在は老朽化した店舗の改装を行っており、新規出店は控えていたが、上場を機に店舗数の拡大も加速させる考えだ。


写真 商品・製品 AI搭載のショッピングカート「Skip Cart」
AI搭載のショッピングカート「Skip Cart」

リテールAI事業では、テクノロジーを活用した店舗オペレーションの最適化を提案している。特に力を入れているのがAI搭載のショッピングカート「Skip Cart」の導入。2017年からテストを開始し、当初はクーポン配信機能のみだった。その後、POS機能、ハンドスキャナー、スキャン忘れ防止システム、AIレコメンドシステムを導入するなど試行錯誤を繰り返した。導入実績は208店舗で約1万9401台。平均利用率は25.7%で、繁盛店での稼働率はピーク時で80%以上となる。レジ待ちの時間が大幅に減少し、1時間当たりのレジ通過客数は有人レジの約4.2倍、買上点数は約4.9倍となった店も。買い物時間が短縮されることで、店舗や駐車場の回転率向上につながっている。

カートだけでなく、AIカメラの導入も進めている。カメラによって欠品を減らすほか、価格を自動で下げることも可能。クーポンの配布では、酒を飲まない人にビールのクーポンを配るといったミスマッチが発生していたが、収集したPOSデータを活用することで、顧客のニーズに合致した特典を渡すことができるようになる。

「Skip Cart」や「AIカメラ」で収集したデータを分析し、店舗やメーカーにフィードバックする「PDCAサイクル」によって、スマートフォンのように徐々にアップデートしていく店舗を目指す。アプリ決済や顔認証も推進する。

亀田社長は「DX化で大事なのはオペレーション。課題を知っている人がデバイスを作ることが重要」とコメント。同社は顧客データを生かし、サプライチェーン全体の効率化につなげる狙い。流通だけでなく、産学連携による「健康DX」も推進。福岡県宮若市では、レストラン、ホテル、ゴルフ場なども運営しており「生活DX」にも取り組む考えだ。

上場について亀田社長は「上場で社会的信用が得られやすくなり、これからは様々なビジネスチャンスがある。投資家の理解をいただいて、チャレンジしていきたい」と期待を示した。

初値は、公開価格1700円を30.3%上回る2215円。終値は2200円となった。売買代金は552億2792万円。

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