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コラム

成長企業が実践する「評価される」広報チームのつくり方

難しい広報の人材採用…「どんな人が活躍できますか?」の答えを考える

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こんにちは、株式会社はねの矢嶋です。おかげさまで多くの方にこのコラムを読んでいただき、同業の皆さんなどから「こんなテーマについて書いてほしい」「こんな時はどうしたらいい?」といった提案や相談をいただくことが増えてきました。

そこで今回から新たに、専用フォームを設置いただきました。匿名で入力いただけますので、ぜひご意見や内容、テーマのリクエストなどありましたらお気軽にお寄せください。

さて、第6回コラムでは、広報人材の採用について考察したいと思います。

第4回の「ひとり広報」の回でも述べた通り、広報リソースについては、会社の業績や体力にも拠るところが多いので、一時的に「ひとり広報」体制であるのは仕方がないものの、会社/事業課題・世間的なトレンドなどを加味した「対外的なインパクト・モメンタム(勢い)創出」まで広報に求めるのであれば、早期にリソースを拡充し、チーム体制に移行していく必要があります。

そのうえで、「強いチーム」「評価されるチーム」を作るために重要になってくるのが広報人材の採用です。

 

数百人を面接して見えた、経歴別「広報人材」の違い

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LINE、メルカリ在籍時にこれまで私は少なくとも数百人以上の採用面接をしてきました。現在もクライアント企業から相談を受けることが多いですし、実際の選考にも同席させていただく機会もあります。

会社のフェーズや社内/チームにおいて期待される役割によって求める人材像が変わってくるので、「どのような人材を採用すべきか」については、一律の正解があるわけではありません。

一方で、あくまで一般論として、PR経験の有無や出身母体の違い(PR会社・事業会社)によってそれぞれ強みや特性が異なるため、以下のようにその違いをあらかじめ認識しておくことは採用選考時の参考になるでしょう。

  • ■広報担当者として採用対象となる人材の類型
  • 1) 事業会社広報 出身者
  • 2) PR会社広報 出身者
  • 3) 広報未経験者(新卒 or 他職種からのジョブ転換)
  • 注:複数回の転職を経てPR会社と事業会社両方の広報経験がある方や、複数の事業会社広報を経験している方も多いと思いますが、わかりやすさのために一般化して書いています。

 

「推進力」のある事業会社広報の出身者

広報人材の採用において一番多いケースです。前回コラムで述べた通り、事業会社広報においては、PRのスキルや経験以上に、他部署を巻き込む「推進力」が強烈に求められます。

その点、経験を通じて事業会社内での立ち居振る舞いを体得しているという点でポジティブです。

一方で、広報職の場合、同じ事業会社広報の仕事といっても業種・業界・企業規模(上場 or 非上場)・資本(日系 or 外資)が変わると、社内の広報に対する考え方やアプローチ手法、承認フロー等も180度違う、ということは少なくありません。

例えば大企業の広報経験者がスタートアップ広報に転職するとフィットしない、ということも多いので、あらかじめ業務環境やカルチャーについて期待値をすり合わせておくことが肝要です。

 

安定感のあるPR会社広報の出身者

様々な業種・業界のクライアント企業の広報活動支援を通じて、プレスリリース・取材設定・記者発表・メディアリレーションなど一連の広報活動において必要な業務経験を有している、という点で即戦力として期待できます。

一方で、過去の経験上、PR会社出身の方が事業会社に移ると最初は苦労することが多い印象です。曰く「事業部や経営からオーダーが来るのを待ってしまう」「広報としてどうあるべきかのスタンスを持たず、事業部や経営の“正解”を探してしまう」というのがよくあるケースです。

こちらも前回コラムでコメントした通り、事業会社広報とPR会社広報では「使う筋肉が違う」ことに起因する問題です。

大半のPR会社出身者が最初にぶつかる「壁」なので、事業会社広報としての“筋肉”を身につけ、本当の意味で活躍できるようになるには一定の時間的猶予が必要です。

 

一番伸びしろがある広報未経験者

広報の仕事はプレスリリースや取材設定、記者発表など、業務の「型」が決まっているものが多く、一定の広報経験を積んでくると良くも悪くも自分で業務の進め方や影響範囲を規定してしまい、思考やアプローチが硬直化してくる傾向があります。

広報未経験者の場合、広報経験が無いことがデメリットではあるものの、それが故に、「型」にはまることなく思考の柔軟性がある点が最大の利点です。

特にSNSやオウンドメディアの活用、採用広報、インターナルコミュニケーションなど、既存のメディア・報道対応の枠組み以外の領域でも力を発揮してくれるポテンシャルがあります。

また、他職種からのジョブ転換の場合、例えば営業の場合はメディアリレーション、PMの場合はプロダクト理解など、前職種での経験があることで広報活動に活きる部分もあるので、本人のやる気とセンス次第では一番伸びしろがあるとも言えます。

ちなみに、私はLINE・メルカリ時代、1)事業会社の出身者、2)PR会社の出身者、3)広報未経験者のいずれも採用・マネジメントしていましたが、このうち、(出身母体毎の人数に対して)社内で活躍している割合が高かったのは意外にも3)広報未経験者でした。

写真 メルカリPRチームのオフサイトミーティングの風景
メルカリPRチームのオフサイトミーティングの風景/2018年3月頃。

現10Xの中澤理香さん(@r1ccha)、現カウシェ執行役員の大塚早葉さん(@Sayo_OTK)、メルカリ広報ディレクターの宮本祐一さん(@yuichi_miyamo)など、いずれも広報未経験または1年未満でメルカリに入社し、その後目覚ましい活躍をされています。
※ちなみにLINE・メルカリともに、事業会社広報、PR会社出身で活躍しているメンバーはたくさんいます。あくまで「未経験者でも活躍できる」、という例示として一部の方をご紹介させていただいています。

もちろん広報経験は「あるに越したことはない」ですが、「広報経験が長いから活躍できるとは限らない」、ということは頭の片隅に置いておいた方が良いかもしれません。

 

では、どのような人を採用したらいいのか?

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前述のとおり、会社のフェーズや社内/チームから期待される広報の役割によって求める人材像が変わってくるので、一律の正解があるわけではありません。

そもそも、広報業務を首尾よく円滑に回してくれる人が欲しいのか、広報起点で経営や事業に大きなインパクトを創出してくれる人が欲しいのか、その目線感によっても要件は変わってくるでしょう。

一方で、過去に私が協働してきた方たちのうち、年齢や広報スキル・経験の有無を問わず、活躍している方の行動特性はあります。

それはズバリ「自走力」があることです。私の考える「自走力」とは、すなわち以下のようなことです。

  • ・細かく指示を受けなくても自ら課題や目的をセットし、仮説検証型で動ける
  • ・社内外の様々なステークホルダーと適切に合意形成をしながら業務を推進できる
  • ・知的好奇心が強く、新たに学ぼうとする気概がある。自ら情報を取りに行く
  • ・フィードバック耐性があり、自分がよくわからないと思うこと、得意でないことからも逃げない
  • ・過去の経験の延長ではなく、そもそもの目的や「あるべき姿」からフラットに物事を考えることができる。思考の柔軟性

これはもしかしたら職種関係なく、すべてのビジネスパーソンに必要な行動特性かもしれません。極論、広報のテクニカルなスキルは後からいくらでも学ぶことができますが、上記のような行動特性は日ごろから意識していないと身につくものではありません。

これまで私が選考の際にもっとも重視していたのは、この「自走力」でした。

チームリソースを補完するための採用というよりも、将来的にリーダーシップを担うポテンシャルがある「強い人材」を採用し、広報起点で経営や事業に大きなインパクトを創出する「強いチーム」をつくりたいと考えていたので、広報スキル・経験の有無や成果実績の大小にかかわらず、上記に掲げたような「自走力があるか」を意識的に見るようにしていました。

 

広報の仕事に必要な「自走力」を知るための質問

具体的には、選考時の面談で以下のような質問をして、「自分の言葉」で成果を語れるかを重視していました。

  • ・これまで業務上どういうチャレンジがあったか
  • ・このチャレンジの背景に、「あなたが」どういう課題認識を持ち、どのような役割を担い、どんな創意工夫・アプローチを行ったのか
  • ・その結果としてどういう成果を実現したか

「広報の力で売上XX億円達成しました」「社会現象化することに成功しました」など、具体的な成果をアピールする方は多いと思うのですが、深掘りして上記のような質問をすると、実は「広告・マーケティング部門が全体のコミュニケーション戦略を主導していて、広報は一部手伝っていただけだった」「(外資系企業の場合)日本支社ではローカライズだけやっていた」といったケースが少なくなかったりします。

あるいは、「この会社/事業の世間的な注目度や影響度を鑑みれば、普通に業務を遂行していれば得られる成果ではないか?」と思うこともあります。

別に新聞の一面に載るような大きな成果でなくても構わないのです。面接をする側が一番聞きたいのは、そこに担当者(自分)が介在したことにより、どれくらいの差分(付加価値)を生み出したか、です。

図 広報担当の付加価値とは何か
筆者の講演資料から。

小さな成果でも構わないので、自ら課題を発掘し、課題に対する戦略やアプローチ方針を考え、他部署や経営も巻き込み、成果実現まで至ったストーリーを「借り物の言葉」ではなく、「自分の言葉」で語れる人は、自律的に考えて動ける能力や行動特性を持っている(=自走力がある)ので、違う環境に置かれても活躍してくれる再現性が高いと思います。

今後の採用にあたり、一つの参考にしていただければ幸いです。次回コラムをお楽しみに。

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