本屋大賞実行委員会は4月10日、全国の書店員が“一番売りたい本”として選んだ「2024年本屋大賞」の受賞者を発表した。本屋大賞は、本と読者を最も知る立場にいる書店員が、売れる本を選び出版業界を現場から盛り上げていくといった考えのもと2004年にスタート。今年で21回目となる。
昨年は、凪良ゆう『汝、星のごとく』(講談社)、また過去の大賞には小川洋子『博士の愛した数式』(新潮社)、恩田陸『夜のピクニック』(新潮社)などがある。
今回の本屋大賞は、2022年12月1日から2023年11月30日に刊行された日本の小説が対象。一次投票には全国530書店より736人、二次投票には342書店より443人の投票があった。全国的な書店数減少が続く中、一次投票者は昨年と比べ59書店、121人増加。さらに同賞では初めて、全都道府県の書店員から一次投票が集まった。
2024年の大賞に選ばれたのは、宮島未奈氏の『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)。次いで2位が津村記久子『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版)、3位は塩田武士『存在のすべてを』(朝日新聞出版)となった。
大賞の『成瀬は天下を取りにいく』は、滋賀県大津市に住む中学2年生の成瀬あかりが主人公の青春小説。投票した全国の書店員からは、楽しく読み進められる点や、全身全霊でわが道を行く成瀬の魅力に感嘆する声が多数寄せられた。
代表的なコメントは以下の通り。
「大津のローカルネタと日常あるある感ありの舞台設定。殺人事件やミステリー要素ではなく、日常のストーリー展開でここまで成瀬のパーソナリティーを描き切り一つの作品に作り上げる著者の力量に感心しました」
「全身全霊の成瀬が大好きだ。成瀬に出会えたことで、目に映る景色がより鮮やかになる」
「とにかく楽しめる読める、本屋大賞にふさわしい作品」
宮島氏は単行本デビュー作での大賞受賞について「本屋大賞の受賞作家として、この看板を背負っていくと思うと身が引き締まる思い。コロナ禍に小説家人生をスタートさせたので、このような大きな会場で大勢の人に祝ってもらえて嬉しい」と喜びを語った。
その他、部門賞も発表され、翻訳小説部門の1位にはファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(集英社、牧野美加 訳)、発掘部門の超発掘本!は、井上夢人『プラスティック』(講談社文庫)となった。
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