デジタルからテレビをはじめとするマスメディア、さらには店頭行動までがデータで一本につながるようになったことで、メディア投資戦略にイノベーションを起こすような新たな取り組みが始まっています。本連載では、企業・メディア・広告会社に多面的な取材を行う中で、マーケティング・コミュニケーションの未来を探っていきます。今回は、愛知県名古屋市に本社を置く大同特殊鋼で広報を担当する市川明子氏と、博報堂DYメディアパートナーズの岩田衣世氏、博報堂 中部支社ビジネスプロデューサーの小木曽宏之氏を迎え、同社の企業認知向上を目的としたテレビCM出稿について話を聞きます。
写真左から、大同特殊鋼 経営企画部 コーポレートコミュニケーション室長 市川明子氏、博報堂DYメディアパートナーズ メディアプラニング統括 岩田衣世氏、博報堂 中部支社 ビジネスプロデューサー 小木曽宏之氏
データで媒体の価値を明らかにして可視化の先の「手ごたえ」を感じた
――大同特殊鋼では近年、広報活動を積極化しています。背景をお聞かせください。市川
:私たち大同特殊鋼は、「特殊鋼」という鉄と炭素にさまざまな合金元素を添加して、用途に合わせた特性を付加した鋼を製造しているメーカーです。BtoB企業であるがゆえ、これまでは取引先向けの製品広告やPRが中心で、企業認知向上を目的としたBtoCの広報やIR活動には積極的に取り組んではいませんでした。
しかし、1990年代以降、右肩下がりで企業認知度が下降。業績は好調にも関わらず、投資家からの評価や、採用活動時に学生が集まらないなど、課題が浮き彫りになっていました。そこで2022年7月に立ち上がったのが、私が所属するコーポレートコミュニケーション室です。「大同特殊鋼」という社名の認知度を上げることがミッションのひとつ。その解決策として博報堂DYグループさんに提案いただいたのが、テレビCMを中心とした広報活動でした。
――博報堂DYグループはどのような提案をしたのでしょうか。岩田
:企業に対する好意度や就職意向、投資意向を高めるためには、どのようなタイミングや頻度でCMに出会うと最も気持ちが動くのか。「AaaS※」を用いてリーチや認知などのメディア指標を分析し、様々なデータやアルゴリズム、これまでの知見を基に、プラニングしました。
