「SNSの内容を鵜吞みにしていませんか?」という問い
「決めつけ刑事」の放映は2024年7月から。本CMを企画したのは、福岡市の広告会社 BBDO J WESTのアソシエイトクリエイティブディレクター 平田純一氏だ。どのような意図で制作し、今回の反響をどう見ているのか。
「情報元や事実が不明の投稿によって何の罪もない人が被害を受けるということが、少しでも減らせたらと思い企画しました。多くの人に伝わりやすい刑事ドラマの設定にし、『決めつけ刑事』はあえて誇張したエンタメ性の高いキャラクターを意識しています。『こんなSNSの1本の投稿だけを根拠にする刑事なんてありえない』と感じると思うのですが、『あなたも、こうなっていませんか?』というコピーで、自分の日常生活に置き換えた時にそういった場面が無かったのか、視聴者に気付きを与えられるような構造にしました」(平田氏)。
今回話題を集めたことにより、「決めつけ刑事」という言葉自体も、不十分な情報をもとに決めつけをしてしまう人を意味する代名詞のようにも使われ始めている。
平田氏は、「元々『決めつけ刑事』という言葉自体が流通してほしいという狙いもありました。不確かな情報を元に発信してしまうことやそのような投稿に対して、『決めつけ刑事になってないか?』と一度立ち止まらせてくれる言葉になるということです。その意味では実際にそういった場面で多く使ってもらえていて嬉しく思っています」と話す。
想定外の反応、CM自体も「決めつけ」の対象に?
一方、この騒動の中でSNSを中心に想定外の現象も起きている。「このCMのメッセージ自体がフジテレビの姿勢を代弁しているのではないか」といった声が一部ユーザーの間であがっているのだ。
CMの差し替えが相次ぎ大量に放映され、ACジャパンの啓蒙CMのはずが、フジテレビが主語のメッセージのように聞こえてしまう――その結果「フジテレビはSNSユーザーを批判している」と“決めつける”ような動きに発展してしまったのだ。
「もちろん、企画者として『SNSは嘘しかない』とか『マスメディアだけを信じよう』などと伝えたいわけではありません。通常のテレビCMは、広告主企業が発しているものだと誰もがわかります。ところが今回はACジャパンによる啓蒙のためのCMのはずが、一部では一人称がマスコミ(フジテレビ)であるかのように語られてしまっている。そのためさまざまな人の反感を買い、マスメディア対SNSといった構造ができてしまっているのでは」(平田氏)。
SNS上における“決めつけ”に警鐘を鳴らそうと制作されたCMが、“決めつけ”の対象になってしまっているのかもしれない。
「賛否両論の声が挙がっているが、今回のCMが話題に上ることで、少しでも誰かのことを思いやる行動が広がり、世の中が良い方向に進むことに繋がれば」と平田氏。CMの動画は、ACジャパンの公式サイトでも公開されている。
