トヨタ自動車のSNS戦略において中心的な役割を果たしている、トヨタ・コニック・プロの岸上康一郎氏。岸上氏が手がける同社のUGC施策「トヨタグラム」とその背景にあるSNS戦略について、12月13日に発売した新刊『偶発購買デザイン 「SNSで衝動買い」は設計できる』著者の一人である電通 戦略プランナーの松岡康氏が話を聞いた。
自社発信からユーザーの投稿を促す形に切り替えた
松岡
:トヨタ車オーナーが自らの車を撮影し、 ハッシュタグをつけてInstagram に投稿する「トヨタグラム」は、「車好き」コミュニティの熱量をうまく活かしてユーザー発のブランド形成に成功した例だと感じています。どのように始まった企画なのでしょうか?
岸上
:「トヨタグラム」は2017年にスタートしたオーナー向け施策であり、ユーザーから発信するブランドという観点で運用しています。企画の狙いは、SNSを起点にトヨタ車のオーナーに販売店へ来店していただくこと、フォロワーを介して若年層などがトヨタの情報に触れる機会を増やすことで、トヨタブランドに対する共感度の向上を図ることです。
松岡
:立ち上げ当初から今の形だったのでしょうか。
岸上
:実は、当初はフォロワーエンゲージメントを取ることを目標に、自社のカタログ素材やイベントを Instagram に投稿することから始めたんです。しかし、投稿を続けていく中で マンネリ化したり、素材が枯渇して投稿頻度やエンゲージメントが低下する悪循環に陥ってしまって。そこで、始めたのが「グランドツーリング企画」でした。ユーザーに「絶景×ドライブ」というテーマを提供し、行動(投稿や絶景ポイントへのドライブ)を促したいという考えがありました。その結果、Instagramのエンゲージメントを安定して獲得できるようになり、ユーザーの態度変容スコアも急速に上がっていきました。
