広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。人事異動も多い日本企業の場合、専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、企業のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のキャリアプランを考えていたのでしょうか。横のつながりも多い広報の世界。本コラムではリレー形式で、「広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。アスエネの伊集 理予さんからの紹介で今回登場するのは、AIメディカルサービスの谷口愛美さんです。
AI医療機器業界の未来を拓く広報を目指して
Q1:現在の仕事の内容とは?
私は、内視鏡画像診断支援AIを研究開発する株式会社AIメディカルサービスで広報を担当しています。当社は、「世界の患者を救う」というミッションを掲げる医療AIスタートアップです。ディープラーニング技術を活用して早期胃がんや胃炎、胃の正常粘膜など大量の症例を学習させたAIが、内視鏡検査(胃カメラ)中に医師の診断をサポートするという技術を研究開発しています。
当社が解決しようとしている社会課題は胃・大腸・食道などの消化管関連のがんです。世界的にみて消化管関連のがんで亡くなってしまう人は全がんの中でも最も多く、特に日本人は胃がんや大腸がんの死亡者数が非常に多いです。その一因となっているのが早期におけるがんの見逃しであり、例えば早期の胃がんは約2割程度が見逃されてしまっているという報告があります。
早期胃がんを見つけることは経験のある医師にとっても難しく、人の目で診る検査のためその質も医師の経験に依ってしまいます。また、地域によっては内視鏡専門医の数が不足しているという課題もあります。これらの社会課題を解決するために、大量の症例を学習させたAIと医師がともに内視鏡検査を行うことでがんの見逃しを減らし、内視鏡検査の質を均一にしたい、そんな思いで日々広報業務に取り組んでいます。
AI医療機器の社会実装はまだ始まったばかりで、多くの医療機関では導入が進んでいないのが現状です。そのため広報活動では、自社の技術・製品の発信にとどまらず、他社事例も含めた幅広い診療科における医療AIの活用事例や、業界全体の社会実装に向けた課題についても発信するよう意識しています。
また、AI医療機器を開発するスタートアップ企業で構成する業界団体「AI医療機器協議会」の事務局兼広報も務めており、政策提言や社会啓発にも取り組んでいます。
Q2:これまでの職歴は?
新卒でビジネス法分野を中心に扱う法律事務所の秘書を経験した後、「Origami Pay」という決済サービスを展開していたFinTechスタートアップのOrigamiで役員秘書を務めました。もともと人前に立つよりも、身近な人の役に立つことでやりがいを感じるタイプだったため、秘書業務は自分に合っていると感じていました。