経営トップの想いへの共感、社会課題を解決したい自身のマインド 融合する場が広報転職の決め手

広報、マーケティングなどコミュニケーションビジネスの世界には多様な「専門の仕事」があります。人事異動も多い日本企業の場合、専門職としてのキャリアを積もうとした場合、自分なりのキャリアプランも必要とされます。現在、企業のなかで広報職として活躍する人たちは、どのように自分のキャリアプランを考えていたのでしょうか。横のつながりも多い広報の世界。本コラムではリレー形式で、「広報の仕事とキャリア」をテーマにバトンをつないでいただきます。M&Aクラウドの細山加央里さんからの紹介で今回登場するのは、アスエネの伊集 理予さんです。

avatar

伊集 理予氏

アスエネ

大学卒業後、広告、メーカー、メディア業界など5回転職、7社を経験。 企画営業 / 広報 / 広告・マーケ / グラフィックデザイン / PRプランナー / 編集などのさまざまな業務に携わる。 2021年にアスエネに入社し広報に従事。

Q1: 現在の仕事の内容とは?

「次世代によりよい世界を。」をミッションに掲げるクライメートテック領域のスタートアップ、アスエネで広報業務全般を担当しています。

アスエネは、CO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービス「ASUENE」やESG評価クラウドサービス「ASUENE ESG」、SBIホールディングスとの合同会社であるカーボンクレジット排出権取引所「Carbon EX」など、脱炭素・ESG経営を支援するサービスを包括的に展開しています。昨年からはM&Aの案件も増加し、私自身も、アスエネグループのサービス広報から資金調達、海外事業に関するコーポレート広報に至るまで、幅広い業務を手掛けています。

気候変動は、地球規模で取り組むべき喫緊の課題です。その解決の一助となるアスエネのサービスを広く周知し、脱炭素・ESG経営に取り組む企業を増やすことが私たちの使命だと感じています。

昨年は合計で144本のプレスリリースを配信し、多くのメディア、読者の方に当社がこの事業をやる意義を届けることができました。一方で、広報として単なる情報発信にとどめるのではなく、当社のビジョン「次世代を変える会社」として世の中をリードしていくため、社会にポジティブな変革やパーセプションチェンジにつながる発信を意識しています。

いわゆる広報業務と言われるメディアリレーションやプレスリリースの作成、発信に加え、導入企業へのインタビューと記事作成、勉強会の企画・運営、ブランディング施策など、多岐に渡る業務を担当しています。

私はアスエネの広報として、次世代の環境を守るために行動する企業を後押ししたいと考えています。当社のステートメント「世界は本気で変えられる」ように、サステナブルな社会の実現を目指して発信し続けることに情熱を注いでいます。

Q2: これまでの職歴は?

実はジョブホッパーで、アスエネは7社目。業種や職種を問わず、さまざまな経験をしています。仕事が好きだからこそ、自分のライフプランとアラインしながら、かつ、事業を成長させるうえで私が培ってきたさまざまなスキルが役に立てる企業を選んでいたら、このようなキャリアになっていました。

大学までは地元にいたものの、「与えられている環境でダメな人間になりたくない」と考え、親の心配を押し切って東京で就職しました。新卒ではリクルート系の求人広告の代理店で営業を務め、当時は飛び込み営業で名刺をひたすらもらい、何足も靴底をすり減らしました。9月ごろ、「自分の人生と照らし合わせたときに、この仕事を30歳まで続けられるか」と考えて1年で退職しました。

その後、ソフトウェア開発会社では総務・人事をしていましたが、半年後にLED照明メーカーの立ち上げメンバーに選出され、オフィス探しからスタート。この会社で、初めて広報業務を担当することになりました。広報と言われても何をすべきかわからなかったので、本を読んだり、周りの方から話を聞いたりして、まずアウトプットをすることを心がけました。

創業当初は数名だったので、広報のほかに、マーケティングや営業企画、商品企画などもやりました。子どもを授かり、育休中には息子をおんぶしながらデザインスクールに通い、グラフィックデザインを習得、育休を明けてからは、デザイン業務も一部担当していました。自分たちで会社を作り上げていく楽しさは、このときに知ったのだと思います。

その後は、情報を発信する側にまわりたいと考え、ライフスタイルメディアを3社経験しました。編集業務も初めての経験だったので、ひたすら自分で記事を書き、アウトプットをしていくなかで、勘所を掴んでいったのを覚えています。メディアでは、編集業務だけでなく営業、PRプランナーなどに従事しながら、企業の課題をPRの力でどう解決していくか、また企業の魅力をどう届けていくかについて考え続けていたように思います。

前職ではサステナブルメディアを運営していたため、気候変動は馴染み深い問題でした。とある案件で「気候変動を抑制するために、すぐできるのはエネルギーを変えることだ」と聞き、それが印象に残っていたので、アスエネを知ったときに「まさにこれだ!」と思いました。当時はまだ、会社のWEBサイトにほぼ情報がなく不安でしたが、アスエネのミッションと代表の西和田、COOの岩田と話して挑戦してみたい気持ちが上回りました。そして、2021年10月にアスエネへ入社しました。

Q3: 転職や社内異動などに際して、強く意識したこととは?

私は転職するときは、いつも「人」と「事業内容」の2つを軸にして決めています。「人」に関しては、創業者の想いや一緒に働く人を見ています。「事業内容」でもグローバルでの課題になっている気候変動の解決に貢献できる点が魅力でした。

私自身も13歳の息子がいます。ちょうど東日本大震災のときに妊娠中だったこともあり、「私はこの子を守れるのか、子どもたちが健やかに生きられる世界を残したい」と思っていました。アスエネに決めたのは、代表の西和田が創業時に掲げたミッション「次世代によりよい世界を。」に共感できたことと、私もその実現に貢献したいと思ったからです。

アスエネ創業2年後に私はジョインしたのですが、誰もが社会貢献とビジネスの両立を目指している熱いメンバーがそろっていました。当時から比べると30倍ぐらいの人数になりましたが、変わらず熱い想いを持った方が集まっていてうれしいですし、アスエネを選んでくれたことの責任感も感じています。

Q4: 国内において広報としてのキャリア形成で悩みとなることは?

広報と言っても、企業によって任される業務は多岐にわたります。特にスタートアップはひとり広報でスタートすることも多く、PR戦略から実務レベルの対応まで幅広くカバーすることが求められます。一方で、相談できる人がおらず、広報業務の可視化、評価の仕方がわからず、もがき続けるケースもしばしばあります。

このようななかで、戦略を練ってみたり、広報の成果を見せることを考えたりしても正解は見つけづらいかもしれません。私も当初は戦略に沿って業務をやりたいと考えていましたが、事業がどんどん成長する過程において戦略もアップデートされていくため、業務を合わせていこうという考え方にシフトしました。

その柔軟性をつけるために取り組んだのは、量をやり続けることと自分のスキルを深めることです。例えばプレスリリースの配信本数でも、まずネタを出す、プレスリリースを配信し続けることで傾向と対策が掴めるようになります。また、企業としても認知を高められるので、掲載数を増やすことができます。

合わせて、広報業務やそれに関する業務のスキルをつけることも大切だと実感しています。私はアスエネに入社した当初、広報のほかに、CS(カスタマーサクセス)、メディアの大きく分けて3つの業務を行っていました。特にCSとして顧客の声を直接聞けたことは、とても有益なチャンスでした。

広報の業務をするにしても、これまで培ってきた編集、ブランディング、情報の伝え方をはじめ、営業・CSでの顧客とのやりとりの経験、気候変動やサステナビリティに関する知識などが活かせています。これらの経験をすべて生かせていると実感しているからこそ、今も絶えずいろいろなナレッジを集めるようにしているし、広報業務における自身の成長やキャリア形成において大きな助けになると考えています。

Q5: 広報職の経験を活かして、今後チャレンジしたいことは?

まずは、アスエネの事業をさらに成長させ、クライメートテック業界でグローバルNo.1を目指すことです。そのために、広報という役割を最大限に活用し、アスエネのミッションやビジョンを多くの人に届け、共感してもらえる発信をし続けたいと考えています。特に、気候変動の深刻さや、私たちが少しずつ地球によいことをするだけで、次世代が変わることを伝えていきたいです。

広報活動を通じて、国内外の企業だけでなく、一般の方々や政策立案者にもアスエネのメッセージを届け、脱炭素社会の推進に貢献することがアスエネの広報の使命だと考えています。また、広報の枠を超えた視点を持ち、新たな取り組みを推進する「攻めの広報」として、アスエネを支えるステークホルダーとともに未来を創っていきたいと思っています。気候変動に立ち向かうアスエネの挑戦を、多くの人に共有し、共に進む仲間を増やしていきたいと考えています。

その結果、サステナブルな社会を実現する一助となり、社会全体にポジティブな変化をもたらしたいと考えています。この挑戦を通じて、私自身もさらなる成長を遂げ、未来の気候変動に立ち向かう広報の在り方を模索し続けます。
 
 
【次回のコラムの担当は?】
AIメディカルサービスの谷口 愛美さんをご紹介します。AIメディカルサービスさんは、AIを活用して内視鏡の診断システムを開発するスタートアップです。2024年末に、AI搭載の内視鏡画像診断支援ソフトウェアの製造販売が承認されており、胃がんの早期発見のために非常に重要なサービスを提供しています。

谷口さんは、AIメディカルサービスで初めて医療業界の広報に携わったそうです。しかし、現在では注目の医療系スタートアップとして、テレビや雑誌などでも紹介されるなど、バイタリティ高く広報業務を行っていて、とても尊敬しています。難易度の高い医療系の広報を、谷口さんがどのように取り組んでいるか、ぜひ教えてもらいたいです。

advertimes_endmark

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ