フジテレビをめぐる一連の問題で、広告主によるCM出稿の停止が続いている。かつて宣伝部長と広報部長の双方を経験した岡田貴浩氏は、フジテレビの経営体制や人権意識を問題視するのはスポンサー企業の「広報部」視点であり、「宣伝部」視点ではより本質的な、広告効果への疑義の目が向けられていると分析する。
広告を停止してどんな影響があったのか
一連のフジテレビへの広告差し止めを見て思うのは、フジテレビによる早期の事実解明や再発防止や企業ガバナンスではなく、「そもそも広告媒体としてのテレビの位置づけ」についてです。
これが90年代であれば、まったく違ったものになったはずです。広告媒体としての「4マス」というポジション、中でもターゲットへのリーチやフリークエンシーの高いテレビメディア。しかも全国ネットで4局しかない限られたメディアの一角。しかも視聴率の高い全盛期のフジテレビへの広告出稿ができないことは、宣伝部にとって大きな痛手を感じたかもしれません。
あのクローズな会見以降、一斉に宣伝部が出稿から手を引いた要因として「継続することをSNSで批判されること」や、広告主の人権問題などの姿勢を世の中や株主などのステークホルダーから問われることなどが挙げられていますが、実際のところは「別にフジテレビの広告を停止してもたいして影響はない」というのが宣伝部の本音ではないでしょうか。
ネット広告市場は今やテレビの倍の規模
もちろん、今でもテレビ広告出稿時の自社サイトへの流入量などでその効果が測定され、効果があると判断している企業も多いことでしょう。とくに食品や消費財などの会社や無形の商品である保険や金融などは、接触機会を得る手段としてのテレビ広告に頼る部分も多いと思います。
