▶【前回】今年の見どころは?「SXSW2025」AIとクリエイティビティの交差点を探る はこちら
ある老紳士が花屋を訪れる。妻の誕生日プレゼントに迷っていた。
思い出分析AIに夫婦の30年分の記憶を託すと、
二人の人生の転機に咲いていた花々が提案される。
だが見覚えのない一輪の赤いバラが混じっていた。
“これは?”と問うと、AIは答えた。
“奥様が亡くなる直前、あなたの知らない男性から贈られた花です。
分析を続けますか?”
SXSWの「顔」と言ってもいいフューチャリストのエイミー・ウェブ氏は、今回のSXSWで「2025 テックトレンドレポート」について話しました。その中で、生成AIと共存する世界において生じうる、死後のデジタルライフやプライバシーなどの問題について指摘しています。
前述のストーリーはそれを表したものですが、彼女がこのとおり話したわけではありません。これは彼女が現地で話した内容について、私が生成AIを使って作成したストーリーです。
大量の技術用語を含む難解なレポートも、SF風の物語形式に変換することで、わかりやすく自分ごと化することができます。
エイミー氏の講演はSXSWで20年以上にわたって続いている。
こうした変換は、ChatGPTのようなありふれたAIツールで、シンプルなプロンプトを入力するだけで実行可能です。Googleが2024年に日本版をローンチしたAIリサーチアシスタントツール「notebookLM」では、まさにこの「コンテンツの変換」が主要な機能となっています。コンテンツの形式を消費側が好みに合わせて主体的に選択する「創造的消費」といえる行為は既にあたりまえになりつつあるといえます。
ちなみに先述したSXSW2025のエイミー氏による「2025 テックトレンドレポート」はYouTubeでも視聴可能(2025年3月末時点)。
クリエイティブ業界を変える
AIとの新たな対話の在り方
今回のSXSWでは、AIが生産性や効率性の向上だけではなく、人間の創造性を拡張する手段として語られ、また実践する様子が数多く見られました。しかし、総務省の「令和6年版情報通信白書」(2024年7月発表)によれば、個人でAIを利用している人の割合が米国では46.3%なのに対して、日本は9.1%と大きく遅れをとっています。この差は、日本のクリエイティブ業界にとって危機であると同時に、大きなチャンスでもあると思います。

