ライオンズファンの共感を狙って、反感を生んだ日――広報の伝え方の責任と覚悟

6月28日、日ハム戦で決勝打を放つ長谷川信哉選手(提供:西武ライオンズ)。

こんにちは。西武ライオンズ広報部長の赤坂修平です。

前回のコラムでは、私たち広報部がファンクラブ会員数をKGI(重要目標達成指標)に設定していることについて紹介しました。「パブリシティの件数」とか「広告換算額」といった、ある種“ふわっとした数字”になりがちな広報の目標を、会社の本質的な定量目標に結び付けたことに、想像以上に多くの反響をいただきました。

特に、企業や団体のバックオフィス領域、いわゆる経営企画や人事、事業開発といった部門に携わる方々から、お声が寄せられたのはうれしかったです。

と、いいことばかりを伝えてしまいがちですが、今回はトーンを変えます。私たち広報の“しくじり”の話です。2月に発表した「相獅相愛」というフレーズに関して、どうしても伝えさせていただきたいことがあります。

そして何より、ファンの皆さまに、この場を借りて心からお詫びさせていただきたく思います。今回もお付き合いいただければ幸いです。

「相獅相愛」という言葉に込めた“つもりだった”想い

本拠地のベルーナドーム(提供:西武ライオンズ)。

2024年の秋、私たち広報部は軽井沢プリンスホテルで1泊2日のオフサイトミーティングを行いました。10月1日付で新体制となり、それまで事業部門にあったブランドデザイン、ウェブ、SNSといった機能が私たちの部に集約され、いわゆる“コミュニケーションのハブ”としての役割を果たすことになったタイミングでした。

そんな時だからこそ、「ファンの皆さんの心に響くコミュニケーションとは何か」を真正面から考えたかったのです。

合宿では、本当に様々な議論を交わしました。脳みそから湯気が出るくらい喧々諤々に議論し、方針を固めていったわけです。その中でたどりついた軸のひとつが「ファンの方々との“インタラクティブな関係”」でした。

一方通行ではないコミュニケーションをしたかった。いよいよ始まる2025シーズンを盛り上げるためにも、「この方針で開幕ポスターを作ろうよ」となりました。

そこでメンバーから見せられたのが、山のような手書きのメッセージの束でした。「実は2024シーズン中に、沿線のショッピングセンターなどで、ファンの方々から応援メッセージをもらっていました」と。「今は辛いけど、頑張ろうライオンズ」、「今年は悔しかったけど、来年こそ!」――そんな熱い言葉が並んでいました。

その中で、私たちの目に留まったのが「相獅相愛」というフレーズです。見た瞬間、「これだ」と思いました。

相思相愛。この言葉を、“獅子(ライオン)”の「獅」に変えて「相獅相愛」。ライオンズというチームを象徴し、ファンの皆さんと双方向でつながっている関係性を一言で表してくれるものになるのではと感じました。

「ファンの皆さんに愛されているからこそ、私たちも応えたい」――そんな想いで、部内でもすぐに賛同が広がり、「相獅相愛」をポスター中央に大きく掲げることに決めました。そして、2月10日に公開。私はキャンプ地で、どんな声が届くか楽しみにしていました。

ところが、所沢にいる担当から来た連絡は、想像とは真逆のものでした。

「赤坂さん、大変です。炎上してます」

次のページ
1 2 3
赤坂修平(西武ライオンズ 広報部長)
赤坂修平(西武ライオンズ 広報部長)

2000年コクド入社、2004年広報室へ配属、以降は西武グループ各社で広報と企画を相互に歩む。2006年プリンスホテル事業企画部広報担当、2009年に同部ゴルフ・スキー担当も兼務。2011年西武ホールディングス広報部、2018年に経営企画本部 経営戦略部。2019年に同本部 西武ラボ(新規事業創造)課長となり、2023年から西武ライオンズ 広報部長。

赤坂修平(西武ライオンズ 広報部長)

2000年コクド入社、2004年広報室へ配属、以降は西武グループ各社で広報と企画を相互に歩む。2006年プリンスホテル事業企画部広報担当、2009年に同部ゴルフ・スキー担当も兼務。2011年西武ホールディングス広報部、2018年に経営企画本部 経営戦略部。2019年に同本部 西武ラボ(新規事業創造)課長となり、2023年から西武ライオンズ 広報部長。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ