『Think Public』というタイトルを拝見した瞬間に、ここ20年にマーケティング・広告業界で起きている変化を、もっとも的確な言葉で表現している、すごい!と唸ってしまいました。トップクリエイターとして、そしてカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルの審査員として世界の広告の潮流を見てきた杉山恒太郎さんならではの見立てです。
トヨタ自動車の豊田章男会長(当時社長)が2018年のプレスカンファレンスで「この指とまれ」という発言をなさいました。モビリティ産業の未来をつくるには、自社だけでは、そして自動車メーカーだけでは課題を解決できない。業界を超えた様々なプレイヤーが協力しあって新しい産業を作っていきましょうという意思表示でした。 日本マーケティング協会は2024年、マーケティングの定義を見直しました。マーケティングは「顧客や社会とともに価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。」という新定義も、市場を作るために様々なプレイヤーとの対話をしていくことが重要だと表明しています。ダボス会議でも「ステークホルダー資本主義」という言葉が使われるようになりました。
様々な立場の人たちを仲間にしていくことがこれからのビジネスにとって不可欠な時代になったということがよくわかります。僕も、ここ20年の広告は「違いを見つける広告」から、「同じを見つける広告」へ次第に変化しているのではないかと感じています。 市場における差別化や、スペックの優位性、つまり違いを伝えることは、もちろん選ばれるブランドになるために必要ですが、異なる立場の人たちと、共通の利益や目標を見つけ、仲間になって、新しい文化や体験を創造したり、社会課題を解決したりすることが今の時代、かなり重要になってきているのではないでしょうか。 非連続なテクノロジーの進化への対応や、山積した社会課題を解決するのは、一人では到底無理。仲間を見つけて立ち向かわなければなりません。
『Think Public』には世界の公共広告の歴史がデジタル化前夜から最新の事例まで紹介されているのですが、公共広告は社会課題解決のため、昔から「仲間を集める」ことが大きなミッションでした。 有名シェフたちと水資源の問題に立ち向かったユニセフの「TAP PROJECT」。海洋のゴミの島に国民を募集した「TRASH ISLES」、医療従事者たちをモデルにしたDoveのReal Beautyキャンペーンの「Courage is Beautiful(勇気こそ美しい)」などなど、紹介される数々の名キャンペーンの事例には今の時代のマーケティング戦略立案者、広告制作者が必要とする「仲間を集めるための」ヒントが詰まっています。
Think Publicは公共広告を作る思想ではなく、今の時代のマーケティング、広告制作をしていくうえで欠かせない考え方になっているんです。 さあ、今日からthink publicで行きましょう!
『THINK PUBLIC 世界のクリエイティブは公共の課題に答えを出す』杉山恒太郎
(著) 河尻亨一(編集協力)
定価:2200円(本体2000円+税)
ISBN 978-4-88335-628-7
小学館「ピッカピカの1年生」、サントリーローヤル「ランボー」などで国内外の広告賞を多数受賞し、世界最大級の広告祭・カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルの国際審査員を3度務めるなど、国内外で活躍するクリエイター 杉山恒太郎氏。
国内外のクリエイティブを熟知し、考察し続けている杉山氏による新刊『THINK PUBLIC 世界のクリエイティブは公共の課題に答えを出す』で取り上げる広告は、一般的に「公共広告」と呼ばれているものが多くあります。「公共広告」と聞くと、非営利団体や行政、国連関連組織によるキャンペーンを想像する方が多いかもしれません。しかし、本書では企業による公共サービス型の事例も織り交ぜながら、さらに一歩踏み込み、氏はこれからの広告のあるべき姿とし「THINK PUBLIC」を提言します。
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