同社は2022年より、新卒から入社8年目でプロデューサーになることを目指す「プロデューサー育成プロジェクト」を始動。ライセンス制度や宣伝会議の研修を組み込んだ独自プログラムを通じて、社員の成長と定着を支援している。制度設計の背景と、現場におけるリアルな運用実態を、人材マネジメント部の丸山華奈氏、山村聡穂氏、稲葉光海氏の3名へインタビューした。
左から、TYO 社長室 人材マネジメント部の山村聡穂氏、稲葉光海氏、丸山華奈氏
「こんな制度が欲しかった」から生まれた育成プログラム
━━TYOの教育制度について教えてください。
丸山:広告映像などのコンテンツを手掛けるプロデューサーになるまでは、およそ新人から7年ほどの経験を積む必要があります。そこでTYOでは、「人材が最大の資産であり競争力」との考えのもと、プロデューサーに至るまでのキャリアを3つのステージに分け、ステージごとに必要な育成プログラムを構築しています。
ステージ1は入社から2年目程度を想定し、業務の基礎理解や広告制作の基礎を固める時期。ステージ2では3~5年目の社員を対象に、応用的な知識や後輩育成のためのマネジメント意識を養います。そしてプロデューサー一歩手前のステージ3では、見積作成や顧客折衝など、より実務的なスキルを身につけてもらいます。これらのステージをクリアすることで、正式なプロデューサーとなり、社内外でリーダーシップを発揮することが期待されます。
━━かなり細かく分かれているんですね。
山村:OJTとOFF-JTを組み合わせ、それぞれのステージで「何を学ぶか」「何をできるようになるか」が明確に定義されており、ステップアップの道筋が見える設計になっています。例えば1~2年目には広告制作の楽しさも感じてほしいので、なるべく親しみのある方に講師をしていただくといった工夫もしています。
ステージ2レベルになると、人によっては担当する仕事に偏りが出てきます。そこで、知識を広げるために、業種別ナレッジ共有という研修も用意しました。業種別にその商品や表現方法を得意としている社内のプロデューサーが講師となり、案件ごとに必要な知識や、撮影におけるポイント、プロデューサーとして目指すべき姿勢などを話してもらっています。
また、ちょうど将来のことに悩む年次でもあるので、未来設計ビジョン研修も組み込んでいます。この研修は、プロダクションマネージャーとして経験する中で将来的に身につくスキルなどの話もしながら、実際にTYOから別会社に転職した方にも登壇いただき、TYOでの経験がどのように活きるのかという話もしてもらいます。この仕事は特殊だと思われがちですが、プロジェクトマネジメントはどの業界でも通用するスキルだということを伝えたいという思いがあります。
━━2022年からの新しい制度とのことですが、どのような経緯でできたのでしょうか。
丸山:もともと、2021年に現体制になる前までは、体系立った研修制度は存在しませんでした。早船が社長に就任した際、「個性豊かなコンテンツプロデューサーを生み出す」という信念から、新たに教育制度を整えることになりました。早船もそうですが、現プロデューサーたちの「体系的に学びたかった」という思いが、制度設計の原動力になっています。
さらに、制度設計のタイミングがコロナ禍と重なったことも大きかったです。リモートワークが増え、先輩から対面で教わる機会が失われたことで、若手社員の孤立や離職が課題になったことも、この研修制度を始めたきっかけです。なんとかこの課題を解決させるために1年かけて研修内容を整備し、2022年から実際に運用を始めました。
外部講師を活用した“視野を広げる”育成設計
━━その中に、宣伝会議の講座も組み込んでいただいています。
稲葉:今、宣伝会議とはステージ1と3で一緒に講座を行っています。宣伝会議は第一線で活躍するクリエイターやマーケターとのつながりが強いので、ステージごとに適した方を外部講師としてお招きして講義を行っていただいています。特に、ステージ3になるとプロデューサーを見据えてもらうため、映像制作だけの話じゃなくて、デジタル戦略やマーケティングの知識を得る研修も行っています。映像制作において、コミュニケーションをどのように捉えるかという視点を学び、柔軟な思考を育むことができています。
山村:実際に講師の方から、現場の進行で印象に残ったエピソードも聞けるので、実務につながっています。また、研修内容はもちろん、登壇者もバランスを見ながら毎年アップデートしています。毎年10月くらいに、翌年の研修内容を考えており、「こういうことをもっと教えてほしい」といった社員のアンケートの声を反映することもあります。
━━研修の成果はどのように測っているのでしょうか。
山村:TYOの育成制度では、単に研修を実施するだけでなく、その成果や習得度を人事評価にしっかりと反映する「ライセンス制度」を導入しています。これは各ステージごとに定められた項目をクリアすることで、次のステージに進めるという仕組みです。必須研修を受講した後、直属の上司や役員が実務での成長ぶりやスキル活用の様子を評価し、総合的な判断で“ライセンス昇格”が決定します。各ステージと給与テーブルが連動しているので、モチベーションにも大きく寄与しているようです。
━━実際に、研修を受けた方の反応はどうでしょうか。
稲葉:研修後のレポートやアンケートでも、「自分が経験したことがない種類の案件知識を得られた」「自身のステップアップにつながった」などの意見が出ています。また、広告会社での経験がある方に来ていただくことも多いので、得意先の方たちが普段どのように考え、広告制作に携わっているのかを知れるという点も大きいようです。研修資料は社内ポータルサイトからいつでも閲覧できるようになっているため、実際に新規案件を担当する前に見直すという使い方をしている社員もいます。
━━今後の展望や考えていることがあれば教えてください。
丸山:2022年からスタートしたプロデューサー育成研修プロジェクトなので、新卒からこの研修制度を経験した最初のプロデューサーが2029年に誕生する予定です。その時、どのように魅力的なプロデューサーが誕生するか、とても楽しみにしています。現場のプロデューサーは選択の連続で、あらゆる経験値がプロデューサーとして大きく飛躍できる鍵となります。生成AI制作の選択など、時代の流れはどんどん変わっていきますが、今後も相手の期待値を超えられる、クオリティの高いプロデュースができるように、時代に合わせた人材を育成する研修の仕組みを開発していければと思っています。
宣伝会議では、自社や業界の課題に合わせた講座カリキュラムの共同開発や、教育講座の受け放題プランもございます。
研修内容、形式についてのカスタマイズのご相談やお見積もりも承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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