JR九州とSOU FRAGRANCEは、7月25日よりJR折尾駅における香り演出の実証実験を開始する。
プロジェクトでは、香りによる空間演出と企業ブランディングを手がけるSOU FRAGRANCEとJR九州が連携。同駅の社員も共に香りの検討・選出を行い、オリジナルフレグランス「Awai–折尾ノ香」を調合した。7月25日から8月24日の期間、みどりの窓口内にアロマディフューザーを設置し、香りによる空間快適性や滞在印象の変化、駅利用者への感情的記憶への影響などを検証していく。
通過点ではなく記憶に残る場所へ
北九州市のJR折尾駅は、大正5年に建てられた日本初の立体交差駅としても知られ、複数の路線が交差する迷路のような構造になっていたという。約20年にわたる「折尾地区総合整備事業」を経て、2021年1月、駅舎がリニューアル。旧折尾駅舎の外観やシンボル的な部材を可能な限り再現したうえで、駅の構造もシンプルに改修された。
(左)旧折尾駅駅舎、(右)新折尾駅駅舎。
今回の実証実験のコンセプトは「心ととのう駅」。演出には、駅の歴史的背景と現代性を融合させた香りを採用したという。
オリジナルフレグランス「Awai–折尾ノ香」は、ピンクグレープフルーツのフレッシュさ、ユーカリシトリオドラの爽やかさ、ヒノキの静けさ、フランキンセンスやサンダルウッドの深み、ベンゾインの温かみなど、木と柑橘の軽やかさと落ち着きをテーマに調香。天然精油100%を使用し、アルコールや合成香料等での希釈は行っていないという。
SOU FRAGRANCE代表でフレグランスプランナーの折井茜氏は次のように話す。
「香りの広がり方や滞留の仕方については検証・観察を続けている段階です。今後、時間帯・人の流れ・気温などに応じて、どのように香りが作用するのかを見極めながら、より適した手法の検討につなげていければと考えています」(折井氏)。
折井氏自身も以前JRに勤務していたことがあるといい、今回の実証実験はJR九州への直接のアプローチから始まった。
「現在、香りの専門家として活動するなかで、『香り』がその場にやさしく作用し、人の心にささやかな変化や余白をもたらす可能性を強く感じていました。そのような確信のもと、“香りによって駅という日常空間を少しだけ心地よく変える”という提案をさせていただき、折尾駅の水嶋法子駅長をはじめとする皆さまのご理解とご協力のもと、実証という形に進むことができました」(折井氏)。
今後はアンケートにより、駅利用者の感情的記憶への影響などを調査予定。また地域素材を用いた空間演出の可能性や、香りと駅ブランディングの親和性などについても検証し、他の駅や施設への展開、都市空間での感性価値の創出をめざしていくという。

