米大統領選や日本の衆院選、参院選など、昨今の選挙戦で話題となったのが「SNSの影響力」である。多くの情報を手軽に得られるなどのメリットがある一方で、フェイクニュースの拡散を含むネガティブな側面も指摘されている。
今後の言論空間はどうあるべきか、そして日本の記者やメディアには何が求められているのだろうか。新聞、ネットメディアなど多様なメディアで活躍され、現在はTBSテレビ特任執行役員で「TBS CROSS DIG with Bloomberg」のCCO(チーフコンテンツオフィサー)を務める竹下隆一郎氏に話を聞いた。
※本記事は情報、メディア、コミュニケーション、ジャーナリズムについて学びたい人たちのために、おもに学部レベルの教育を2年間にわたって行う教育組織である、東京大学大学院情報学環教育部の有志と『宣伝会議』編集部が連携して実施する「宣伝会議学生記者」企画によって制作されたものです。企画・取材・執筆をすべて教育部の学生が自ら行っています。
※本記事の取材は教育部修了生の野崎佳奈子、櫻井恵、平松優太、教育部所属の佐藤良祐、西本知貴、足立あゆみ、樋口隆充が、取材・執筆は教育部所属・石崎正文が担当しました。
TBSテレビ特任執行役員 「TBS CROSS DIG with Bloomberg」のCCO(チーフコンテンツオフィサー)を務める竹下隆一郎氏。
「総合コンテンツ企業」としてのTBSに感じた魅力
━━竹下さんは2024年11月1日付で、TBSテレビ(TBS)の特任執行役員、ならびにTBSとブルームバーグ・メディアの共同ブランドによるニュースサービス「TBS CROSS DIG with Bloomberg」のチーフコンテンツオフィサー(Chief Content Officer, CCO)に就任しました。このポジションで、どのような役割を担っているのでしょうか。
TBSとブルームバーグ・メディアが2024年5月に戦略的パートナーシップを発表。その後、日本のユーザー向けにプレミアムなビジネス・金融ニュースを配信する「TBS CROSS DIG with Bloomberg」を正式にスタートしました。私の役割の中心は、このブルームバーグ・メディアとの提携事業にあります。
提携の目的は大きく分けて3点挙げられます。ひとつが、YouTubeをはじめとしたデジタル映像の展開、2つ目は新しい広告の形をつくること、3つ目は日本のメディアのグローバル化です。
━━2つ目の「新しい広告の形」とは、具体的にどのようなものでしょうか。
これはブルームバーグ・メディアが得意とする領域です。クライアント企業と共に制作するアニメや音声、動画といったコンテンツなどのブランド広告を通じて、企業をサポートするものです。こうしたコンテンツ制作の仕事を通じて、企業のブランディングにかかわることもあると思います。
CROSSDIGでは、ブランドスタジオという画期的な部署を2025年7月1日に新設しました。ブランド広告担当の専門部隊が広告をつくる過程で、企業のトップが普段話さないような深い話もしてくれるようになると考えます。メディアにいる人は理解してくれると思うのですが、たとえばインタビューの過程で、「うちの社長にこんな一面があったのですね」と驚く経験が多くあると思います。あるいは人権や環境に関する社会の課題について議論することも、メディアが得意とします。そうしたメディアの機能を、編集部門ではなく、広告専門の部隊が身に付ければどうなるか。経営者が考えていることを引き出して、企業のタグラインやブランドステートメントをつくるサポートもできるのではないかと考えています。
