4月中旬、電通本社で見かけた「PRは人生の必須科目」というメッセージ。数あるPR関連書籍の中でも、ひときわ目を引いたのが、ピンク色の表紙の『新しい「企業価値」を創出する PR4.0への提言』でした。
2017年から2020年まで味の素でコーポレート広報を担当していた私は、すぐにこの本に引き込まれました。特に、うま味調味料「味の素®」の原料であるMSG(グルタミン酸ナトリウム)の米国におけるパーセプション向上プロジェクトに携わった自身の経験と本書の内容が鮮烈に重なったからです。
このプロジェクトは、1970年代に発表された事実無根の論文によって、MSGが「中華料理店症候群」の元凶であるという誤解が広まり、味の素社が40年以上にわたりその悪評(スティグマ)と闘ってきた歴史を背景に始まりました。
私はプロジェクトのパートナーであるグローバルNo.1PR会社のエデルマン社と共にPR戦略を策定・実行する中で、本書が語る内容をまさに実体験しました。
パーパス起点のコミュニケーションが鍵
プロジェクトで最初に膨大な時間を費やしたのは、「味の素社にはどのようなステークホルダーが存在し、これまでどのようなコミュニケーションを行ってきたのか? そして、何を伝えたいのか?」というパーパスを起点としたマルチステークホルダーコミュニケーションの深掘りでした。