生成AIの台頭により、業務の効率化が実現するとともに、メディアの在り方や、企業と人の接点の作り方をも変えるような大きなインパクトが予測されます。マーケターは、これらの技術をどのように受け入れ、業務に活かしていけばいいのでしょうか。今回は、生成AIのビジネスモデルについて、富士通の山根宏彰氏が解説します。
※本記事は月刊『宣伝会議』9月号の連載「AI×マーケティングで未来を拓く」に掲載されています。
使われれば使われるほど赤字規模の経済はAIでは機能しない?
ChatGPTやClaude、Suno AIなど、最先端の生成AIサービスを誰でも無料で使える時代が到来した。文章作成、プログラミング、音楽生成まで、かつては専門家の領域だった作業が今や誰でもAIに手軽に任せることができる。しかし、素朴な疑問が湧いてくる。なぜこれほど高度な技術を、無料で提供できるのだろうか?
実際のところ、生成AIサービスの運営コストは従来のWebサービスと比較しても桁違いに高い。ユーザーが1回質問するたびに、数千億のパラメータを持つ巨大なAIモデルが動き、その処理には高性能GPUでの膨大な計算が必要となる。
しかも、このコストはユーザー数に比例して増加する。現にOpenAIは2024年に約37億ドルの収益に対して約50億ドルの損失を見込んでいる。表層的な理由としてのデータ収集とフリーミアム戦略つまり、使われれば使われるほど赤字が膨らむサービスを、企業は積極的に無料で提供しているのだ。この一見すると自滅的とも思える戦略の背後には、何があるのだろうか?
驚くべきことに、この一見不合理な戦略の背後には、長期的に機能する生成AIに関するビジネスロジックがまだ定まっていないという事実がある。従来の IT 業界の常識である規模の経済は生成 AI では十分に機能せず、持続可能な収益モデルも発展途上である。それでもなお巨額の投資が続く現状は、AI 業界が「ビジネスモデル未確定のまま成長する」という、ビジネスとして前例のない実験を進めていることを示している。
…この続きは8月1日発売の月刊『宣伝会議』9月号 で読むことができます。
