進化したテクノロジーや独自技術を生み出しても、それをどう社会に届け、共感を生み、消費者の行動につなげていかについて頭を抱える企業も多いだろう。本記事は7月に大阪と福岡で開催された「マーケティングサミットリージョナル2025」から注目セミナーをレポート。UCCジャパンの小坂朋代氏は顧客視点を重視したブランディングの創り方を、総合メディカルの中島孝生氏は自社開発アプリによる医療DXについて紹介した。
ユーザーが想像できる半歩先を目指す
UCCはコーヒーに関わるあらゆる事業を展開するコーヒー専業メーカーである。
小坂氏は、「YOINED(ヨインド)」を例に顧客視点を重視したブランディングについて語った。
「YOINED」は、食べるスタイルのコーヒー という未知の領域に挑戦した商品。開発のきっかけは、研究員による「焙煎豆の味と香りを余すことなく味わいたい」という発想から始まり、20年にわたる試行錯誤を経て開発された。小坂氏は「食べるコーヒーに、果たしてどんな価値があるのか」という問いに立ち返った。
重要視したのが、企業の先進技術をユーザーに押し付けるのではなく、ユーザーの想像が及ぶ半歩先を目指すという視点だった。製品の良さを実感してもらうには、顧客が自ら手に取りたくなる工夫が不可欠だと考え、製品開発とブランディングを二軸に分けたプロジェクト体制を構築。製品開発では、未知のカテゴリゆえ、物流や品質保証の在り方もゼロから再構築した。一方、ブランディングにおいては、外部パートナーやこの技術を開発した研究員や直販部門のスタッフなどマーケター以外の声を積極的に取り入れ、顧客目線での価値創出を重視した。これまでの「当たり前」を疑い、新たなワークスタイルでプロジェクトを進めていった。
「余韻」にたどり着いた
「YOINED」という名前には、キーワードの「余韻」が込められている。コーヒーに情熱を注ぐUCCの思いと、新しい体験や誰かに伝えたくなる驚きといった消費者ニーズを重ねた結果、たどり着いたのが「余韻」という言葉であった。鼻に香るオルソネーザルアロマと、口の中から立ち上るレトロネーザルアロマの重なりが生む、飲むよりも濃厚で、長く続く香りこそが「ヨインド」の真価であると小坂氏は語る。
チョコレートの製法をヒントに開発された製品は、ラグジュアリーなビジュアルとともに、「飲まないコーヒー」として一気に認知が広がった。宣伝広告費が0円というなかで、パワーワードのタイトルや新規性でメディの露出を増やし、販売わずか5日で年間目標を達成。自社のECサイトでは初動売上1位を記録した。説明が必要な商品だからこそ直販にこだわり、顧客との対話を大切にした結果だと小坂氏は語る。
また、2024年には「おつまみコーヒー」として再定義し、前年の1.5倍の売上を記録。小坂氏は「前提を疑い、走りながら挑戦するスタイルが鍵だった」と振り返る。顧客目線とスピード感を武器に、YOINEDは3年目のさらなる飛躍を見据えている。
「待つ医療」から「つながる医療」へ
総合メディカルは全国1000超の拠点をもち、医療機関の経営コンサルティングや調剤薬局の運営、医師の紹介・医業継承など、医療機関経営のトータルサポートを展開している。中島氏は冒頭で、現代の医療界が抱える課題を指摘。医療費の増大や医師不足、働き方改革の遅れ、地域偏在など複合的な問題が山積みしていると語った。解決の鍵として注目したのが「医療DX」。マイナ保険証や電子処方箋、電子カルテといったデジタル化の進展により、医療現場は従来の枠組みから脱却しつつある。
特に、クラウドやAIを活用するデジタルディスラプターの登場は、患者さん視点からの効率化を加速させたという。医療機関は待つ医療からつながる医療へと転換しているといった背景のなか、中島氏は、診療から服薬、生活支援まで、全てがオンラインで完結する医療の在り方について模索し始めたと語る。
タヨリスがつなぐ患者さんと医療のタッチポイント
医療界のDX化が求められるなか、総合メディカルが開発したのが、ヘルスケアアプリ「タヨリス」。2023年2月に提供を開始したタヨリスは、診療から薬の受け取り、日々の健康管理までワンストップで対応するアプリだ。タヨリスの名前には、患者さんの「頼り」になりたいという思いと、「お便り」のように身近に寄り添いたいという願いが込められている。
タヨリスは、お薬手帳やオンライン服薬指導、服薬アラーム、バイタル管理、AI問診、電子処方箋連携など、多機能を搭載。他社の様々な健康管理サービスとも連携し、日常の健康データと医療をシームレスにつなげている。結果として、患者さんの利便性向上に加え、医療従事者の業務負担軽減にもつながっていると中島氏は語る。
患者さんとのリアルなタッチポイントに強みを持つ総合メディカルは、タヨリスの導入によってオンライン上においても患者さんとの信頼関係を築くタッチポイントの確保に成功したという。今後はタヨリスを軸に、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」への貢献をさらに加速させていく意向を示した。
中島氏は「医療をスマホで受診できる時代に向けて、現在の医療が抱える不便さに真正面から向き合っていきたい。これからも進化を続ける医療サービスを志す企業と共に、よりよい社会づくりに貢献していきたい」と語り、講演を締めくくった。
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