オサレカンパニー・茅野しのぶさんに聞く、広告が持つパワーとは?—「私の広告観」出張所

月刊『宣伝会議』では、社会に大きな影響を与える有識者が、いまの広告やメディア、コミュニケーションについて、どのように捉えているのかをインタビューする企画「私の広告観」を連載中。ここでは「私の広告観 出張所」として、インタビューの一部や誌面では掲載しきれなかった話をお届けします。今回登場するのは、AKB48をはじめとする、アイドルの“カワイイ”を衣装で牽引してきた茅野しのぶさんです。
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茅野しのぶさん

オサレカンパニー取締役兼クリエイティブディレクター

メンバーの個性を引き出すデザインと豊富なバリエーションで、これまでに携わってきた衣装はおよそ4万着。AKB48以外にも、=LOVEや≠ME、≒JOYといったアイドルから、声優、コスプレイヤー、2.5次元アーティストの衣装、さらに近年では学校制服・医療制服のプロデュースにも尽力。

衣装は、アイドルにとっての「スイッチ」

Q.茅野さんが日々のお仕事のなかで、心掛けていることを教えてください。

学生時代の私は自分に自信がありませんでした。でも衣装という世界に活躍の場を得たことで、成功体験が増え、自信がついてきました。

アイドルのなかにも「自分には個性がない」と悩むメンバーがいるのですが、「個性」や「魅力」は本来、誰もが持っているもの。それを私は衣装の力で引き出したいと思っていて。

衣装はアイドルにとって「スイッチ」だと思っています。

アイドルとして活躍する時期はそう長くはありません。そんな彼女たちに寄り添いたいし、ファンにも喜んでもらえるような世界観を、衣装を通じて提供していきたいですね。

写真 これまで茅野さんが手掛けてきた衣装。

これまで茅野さんが手掛けてきた衣装。

Q.世の中の“トレンド”について、いつもどのようにインプットしていますか?

どんなビジネスの分野でも、アイデアやクリエイティビティは重要な要素です。私はマーケティングにも関心を寄せており、ものづくりにおいて、世の中の“トレンド”を重視しています。

うちのスタッフにもよく言っているのは、自分に興味のない分野でも、世の中で話題になっていることに関心を持ち、なぜそれがヒットしているのか、人気になっているのかを自分なりに分析することが大事だよと。

あまり知らない、興味のなかったジャンルでも最近、話題になっているから行ってみようとか、食べてみようとか。自分で体験することで気付きや発見を得ることを積極的にやってほしいなと思っています。

Q.いま、茅野さんが考える広告が持つパワーとは。

広告は「きっかけづくり」として意義のある存在だとする一方で、「強制的に見せられるもの」として人々の間で認識されてしまっていることが問題ですよね。

どの企業でも受け手のペルソナを重視した広告づくりをしていると思いますが、受け取る側としてはそれを徹底してほしいと思います。

人気のインフルエンサーを起用しても結局、購買するのはその商品のファンだけ、というケースが多いと聞くので、広告主が主体となって宣伝したい対象物の特徴や魅力について、どのメディアをどう使うのかなど、丁寧に伝えていくのが結局のところ大切なのかなと。

今は広告に対して、どうしても“見せられている”感覚を強く覚えてしまいます。広告に対するネガティブな印象が人々の間で定着してしまっているので、いかに受け取ってもらえるのか、広告受難の時代だと思います。ただ、まだまだアイデア次第で良いものはつくれると思うので、生活者の気持ちに寄り添う広告づくりが一番大切なのではないかなと思います。

写真 人物

現在、AKB48以外にも、=LOVEや≠ME、≒JOYなどの衣装も手掛けている茅野さんは、2025年6月に初の書籍『アイドル衣装のひみつ~カワイイの方程式~』(Gakken)を発売。AKB48や=LOVEなどの多くの衣装写真とともに、衣装に込められた秘密や制作エピソードを多数掲載している。©︎Gakken  撮影:布川航太

Q.茅野さんがこれから挑戦したいと考えていることはありますか。

いま一番興味があるのは教育です。学生と話す機会がよくあるのですが、若いうちから自分の適性を見つけて伸ばしていくのが大事なのではと思っています。

彼らは失敗を非常に恐れている傾向にあります。ある学生は「好きなことを仕事にすると、失敗したらショックを受けるのでやりたくない。仕事は収入を得るものとして割り切り別のことをする」と話していて。

いま世の中には多様な情報が溢れていて、その中にあるさまざまな失敗体験が伝わってしまっているんだなと、残念に思いました。なので、失敗してもやり直せるようなマインドセットや環境づくりが大切で、そうしたことに関わっていきたいなと思います。

…茅野さんのインタビュー記事全文は、月刊『宣伝会議』2025年10月号に掲載しています。

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