「宣伝会議のこの本、どんな本」では、当社が刊行した書籍の内容と性格を感じていただけるよう、「はじめに」や識者による本の解説を掲載しています。今回は、10月1日に発売した『美しいブランドのつくりかた 400件の実績から編み出した「シバジム」式コンセプトの作法』(柴田陽子事務所著)の「はじめに」をご紹介します。
私は、ブランドをつくれる人になりたい―。
長く続き、愛されるブランドをつくれる人になろうと私が決意した背景には、独立後の初仕事が大きく影響しています。外食産業でいくつものヒット店を手がけた私に舞い込んできたのは、ある大手居酒屋チェーンの新業態でした。洗練された内装にし、こだわりの食器を揃え、スマートな接客ができるようにマニュアルの開発にも力を入れました。おかげで無事にその店を人気店にすることができ、そこで一度私の役目は終わったものだと思っていました。
ところが、半年後に友人と連れ立ってその店を訪れると、何やら違う雰囲気にとまどいました。水着を着た女性のお酒のポスターが店内の目立つ場所に貼られ、食器はほとんどプラスチック製のものに替えられていました。さらに、あれほど研修を行ったにもかかわらず、ザ・居酒屋という感じの膝付きの接客に逆戻りしていたのです。それを見て、「誰のせいでこんなことになってしまったのか」と悲しみと怒りが混ざった感情が湧き上がってきました。
後で話を聞いてみると、立ち上げ時の店長から運営の店長に変わり、その方なりにサービスを変更したことが分かりました。利益が出るように、よりオペレーションがしやすいようにと、運営視点で良かれと考えて動いた結果だったのです。オープン当初と様変わりした原因は店長や従業員にあるのではなく、この店がお客様にとってどんな店で、何を大事にするべきか、私がきちんと定義していなかったせいだったのだ…と深く反省しました。