J-POPとアイドルカルチャーにおけるファンダム経済と観光・消費行動

コラム第1回

では日本のアニメ・漫画の本質的な力である「物語性」に焦点を当て、ストーリーテリングの手法、IPビジネスの展開、そしてファンダムの力を通じて、物語がいかにしてブランドや国境を越えるのかを探った。

第2回の今回は、J-POPおよびアイドルカルチャーにおけるファンダム経済を「SNSによる拡散」「体験消費としてのリアルイベント」「聖地巡礼と観光行動」「海外ファンによるインバウンド需要」の4つの視点から整理し、その持続性と課題を検討する。

J-POPおよびアイドルカルチャーは、日本の大衆文化を代表する存在であり、単なる娯楽消費を超えた社会的現象として注目されている。従来、音楽はレコードやCDといった媒体を購入し、ライブに参加するという「受動的な消費」に基づくものであった。しかし、SNSの普及によってファンは情報の発信者となり、拡散や翻訳、2次創作を通じて積極的にカルチャーを広める主体へと変化した。この転換は音楽産業にとどまらず、観光や地域経済、さらには国際交流の領域にまで影響を及ぼしている。

SNS時代のファンは「能動的な生産者」

アイドルカルチャーの拡散においてSNSが果たす役割は決定的である。ファンは、X(旧Twitter)やInstagram、TikTokといったプラットフォームを用いて、推しに関する情報を発信し、ハッシュタグや動画を駆使して認知を広げている。とりわけTikTokでのダンスチャレンジやショート動画は、企業の広告に匹敵する影響力を持ち、新規ファン層を取り込む手段として機能している。

従来のファン活動は「消費」という側面が強かったが、SNS時代のファンは「能動的な生産者」として機能する。翻訳やファンアート、応援企画などの行為は、推しの活動を支える「社会的実践」として承認される。その結果、ファン自身の消費意欲も強化され、さらにコミュニティ全体の熱量を高める循環が生まれる。

また、SNSは国際的なファンダムを形成する場としても重要である。日本語を理解しない海外ファンであっても、翻訳コミュニティやリアルタイムの情報共有を通じて、現地のファンと同じ時間軸で盛り上がることが可能になっている。SNSはファンダムの境界を取り払い、越境的なネットワークを拡張させているのである。

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日本エンタメの現在地 ビジネス資産として理解する「コンテンツ」
増淵 敏之

法政大学文学部地理学科教授、専門は文化地理学。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。コンテンツツーリズム学会会長、文化経済学会〈日本〉特別理事、希望郷いわて文化大使、岩手県文化芸術振興審議会委員、NPO氷室冴子青春文学賞特別顧問など公職多数。

増淵 敏之

法政大学文学部地理学科教授、専門は文化地理学。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。コンテンツツーリズム学会会長、文化経済学会〈日本〉特別理事、希望郷いわて文化大使、岩手県文化芸術振興審議会委員、NPO氷室冴子青春文学賞特別顧問など公職多数。

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