AIネイティブとは、「AIが当たり前になって、生活や社会のあらゆる面に広く浸透するようになった世代や個人のこと、またそうした文化や感性のこと」を指します。1990年代以降、パソコンやインターネットが大きく広がり、デジタルネイティブが誕生し、社会は大きく変化しました。今では、デジタルか、アナログか、を意識することなく、当たり前のようにデジタルデバイスを使っています。同じようにAIも、これから、あるいはすでに、生活や社会、ビジネスの中に、加速度的に入り込んでいます。
その中で、AIを使いこなすことに喜びを見出している人がいる一方、この新たな存在に不安を抱えている人、様子見をしている人もいると思います。一つ、確実に言えることは、AIは、この本を書いている2025年現在ですでに強大な力を持つ技術だということです。「未来、AIがここまで進化したらこうなる」という予測ではなく、いま現在ある技術ですでに破壊的なポテンシャルがあり、まだ人間はそれを数%も使いきれていない、という状況にあります。よりよい未来につなげることもできるし、SF小説で何度も描かれているディストピアになる可能性もあるでしょう。
私は、電通のクリエイティブディレクターとして多くの企業のマーケティング活動のお手伝いをする一方、AIの活用・開発に、2015年ごろから取り組んできました。はじめた当時は、生成AIが現れる前でしたから、できることは限られていましたが、生成AI登場後には爆発的にAI活用、AI開発の可能性が広がり、数多くの企業のマーケティング活動でのAI活用の実践例を生み出してきました。
そうした経験の中で、マーケティングにとって、AIとは、単なる利活用ツールの一つではなく、マーケティング自体を大きく変化させるものだ、と確信するようになりました。本書では、それを「AIネイティブマーケティング」と名付け、企業のマーケティングや事業開発、コミュニケーション、クリエイティブに関わる方々にとって、よりよい未来に向けた一つの羅針盤になることを目指します。