「食べる体験」が観光マーケティング資産へ コンビニおにぎりが「旅の目的」になる

食と観光の新しい関係性 「目的」と「ブランド化」

コラム第2回

では 、J-POPとアイドルカルチャーにおけるファンダム経済について解説し、劇場公演や握手会といった「日本でしか体験できないイベント」が、海外ファンにとって大きな来日動機となっていることを説明した。

今回のテーマである「食」もまた観光における位置づけが変化している。従来は観光地を訪れる際の付随的な要素、すなわち「観光の合間に摂る食事」として認識されてきた。しかし、21世紀以降、グローバル化と情報化の進展により、食は単なる補助的要素ではなく、観光の主目的へとシフトしている。観光学やマーケティング研究においても、食文化が「観光資産」「地域ブランド資源」として評価されることが増えている。

寿司やラーメンの世界展開、抹茶スイーツやおにぎりのグローバルブームは、この潮流を象徴的に示す現象である。海外における日本食の普及は、単なる外食産業の海外進出で終わるのではなく、訪日観光の動機形成や日本ブランドの浸透に大きな役割を果たしていると言える。本稿では「商品ローカライズ戦略」「旅の目的化」「ブランド化」という三つの観点から、日本の食文化が観光マーケティング資産としていかに機能しているのかを論じたい。

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増淵 敏之
増淵 敏之

法政大学文学部地理学科教授、専門は文化地理学。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。コンテンツツーリズム学会会長、文化経済学会〈日本〉特別理事、希望郷いわて文化大使、岩手県文化芸術振興審議会委員、NPO氷室冴子青春文学賞特別顧問など公職多数。

増淵 敏之

法政大学文学部地理学科教授、専門は文化地理学。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。コンテンツツーリズム学会会長、文化経済学会〈日本〉特別理事、希望郷いわて文化大使、岩手県文化芸術振興審議会委員、NPO氷室冴子青春文学賞特別顧問など公職多数。

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