伝統的なマネタイズ手法としての「メディアミックス」
第1回では、IP(知的財産)ビジネスが注目される背景と、長くIPビジネスを支えて来たビジネスモデルが構造的な課題も抱えつつある点を指摘した。今回は、IPビジネスの核である「収益化(マネタイズ)」を実現するための『出口戦略(投資回収戦略)』が、どのように多様化しているのかを分析する。
第1回:鬼滅の刃、世界で記録的ヒット いま、日本IPビジネスに何が起きている?
「出口戦略」として日本で極大的に発展してきたのが、メディアミックスと呼ばれる手法だ。マーク・スタインバーグは著書『なぜ日本は〈メディアミックスする国〉なのか』(2015)で、その詳細な分析を行っている。起源は1960年代のマンガを原作としたテレビアニメ『鉄腕アトム』と明治製菓のタイアップにまで遡るが、同書ではKADOKAWAが巨大な国民的人気映画のメディアミックスから、消費者の嗜好の多様化・細分化にあわせて、雑誌やオリジナルアニメなどの中小規模のコンテンツからのメディアミックスを同時多発的に展開する手法に発展させたことも詳しく分析されていた。
漫画やアニメを起点に、グッズ、ゲーム、イベントなど複数の「出口」で収益機会の最大化を図るこのメディアミックス戦略は、第1回で触れた「製作委員会方式」との相性もよく、アニメ製作における資金調達の標準モデルとなっている。