社会課題に広告はどうアプローチすべきか。カンヌライオンズの事例を学生記者が見た

10月17日から24日までに開催された「虎ノ門広告祭」の中から、10月20日に行われた「カンヌライオンズは社会課題にどう挑んだか?」を学生視点でレポートしていく。登壇者は、嶋浩一郎氏(博報堂 執行役員・エグゼクティブクリエイティブ・ディレクター)、長谷川輝波氏(電通 クリエーティブディレクター・コピーライター)、原口亮太氏(TBWA HAKUHODO クリエイティブディレクター)。企業活動そのものが社会課題の解決にもなるこの現代で、広告クリエイティブはどう社会課題にアプローチしていくのか。世界三大広告賞の一つであるカンヌライオンズの事例を元に、3人はトークを進めた。当日は、多くのカンヌ受賞作品が解説とともに上映されたが、本記事では学生記者が特に気になった事例をピックアップしてお届けする。
※取材・執筆は虎ノ門広告祭の学生記者の島田凪が担当しました。

誰もが脳内にストーリーを描いた「恐れを知らぬ少女」

「Fealess Girl」は、2017年の国際女性デーにアメリカの資産運用会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズが設置した、ウォール街にある少女のブロンズ像である。少女の像は証券業界を象徴する雄牛のブロンズ像「チャージング・ブル」に正面から向き合う形で立ち、企業経営陣の女性比率向上などのメッセージ性を含んでいる。

:シンプルなものが良い企画だと思うんです。この一点を変えただけで世の中が動くみたいな。まさにこの少女の像は、その象徴的な企画です。 ウォール街の雄牛像は、男性中心社会の証券業界を象徴し、その前に少女の像を建てれば、男性に対抗するという物語が生まれる。

どんな人も、この少女の像を見たら、その物語を瞬時に理解して共感する

という、その見立てができたところがすごい。

原口

:男女平等はもちろんですけれど、

誰もが物語を想像しやすい象徴的な場所を見つける

ことがすごいですよね。長谷川さんのヘラルボニーの案件もそう。確定申告のポスターを国税庁最寄りの霞ヶ関駅に出すことにアイデアがあると感じます。そんな場所を見つけると、局地的なのにもう一気に広がるというか。

長谷川

:私は雄牛がどんな文脈で置かれているのか知らなかったのですが、世界中で報道されたのは、ノンバーバルで伝わる力がこの像にはあったからだと感じました。雄牛は男性の男らしさの象徴で、そこに対立して少女が立っていることが、女性に力を与える象徴だとすぐわかるのが素敵だし、世界中に広がったきっかけではないかと思いました。

【学生記者・島田はこう感じた】

誰もが想像しやすい物語をシンプルに表現したことが、世界中の人の心を動かした。さらにインターネットが発展し、世界中のニュースを瞬時に知ることができる現代だからこそ、この像は世界に大きな波を生んだと感じました。女の子の像と雄牛のブロンズ像の対峙から生まれる文脈を閃いたクリエイターの方はさぞ脳汁が出たんだろうな……。

真面目ではなく、くだらない方法で社会課題を説く

「Dumb Ways to Die」は、2012年にメトロ・トレイン・メルボルンが開設した鉄道安全キャンペーンの一環で公開されたYouTube動画。アニメーションを通じて鉄道事故の防止を訴えた。

原口

:今も全然ありうる話ですよね。線路内に酔っ払って落ちて大怪我したり、本当に死んでしまったり。そんなうっかり死をいかになくしていくかに焦点をあてた広告です。しかし、真面目な啓発広告ではなく、エンタメ化しているところが最高なんです。自分の髪に火をつけて死んだ人、ヒグマを棒でつついて殺された人、自分の下半身を餌にしてピラニアを釣ろうとして死んだ人など、実際にあったくだらない死に方をこのアニメーションで表現しています。 そのくだらない死に方の一つに、線路に落ちて死ぬ人も含める。小学1年生にわかりやすく面白く伝えるぐらい、

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