国境を越える“体験”──ポーランドで信頼を得た中国EVブランドのPR

IPRN AGM 2025で発表された、欧州PRの好事例を解説する本コラムも第5回目になります。

中国の新興電気自動車ブランドXPENG(中国語名:小鵬汽車、発音は「シャオペン」)が、2025年4月にポーランドで本格的にローンチしました。その市場参入を支え、ポーランドの人々にとって見知らぬブランドであったXPENGを「信頼の対象」に変えたのは、首都・ワルシャワに拠点を置くPRエージェンシー、Public Dialog社です。

彼らが実装したのは、広く社名やブランド名を発信する広告宣伝による戦略ではなく、「体験を通じて共感を生むPR」でした。国や文化、経済圏さえ超えた今回の試みは、PRがもつ本質的な役割を改めて思い出させてくれるものになっています。

市場参入は信頼づくりから始まる

自らが認知されていない国で新興ブランドが参入するにあたり、コミュニケーションの目的として置かれがちなのが「認知拡大」です。しかし、まず取り組むべきは「信頼の足場づくり」だと私は考えます。

当時のポーランドの状況としては、EVへの関心は少しずつ高まりつつあるものの、ドイツ車など欧州ブランドが圧倒的に優勢な市場となっていました。この状況下では、新たに参入する欧州外のブランドに対して、品質への懸念を持つ層も少なくないといえるでしょう。

そこでPublic Dialog社が最初に行ったのは、「知ってもらう・分かってもらう」のではなく、「触れて体験してもらう」ことでした。

製品スペックや企業哲学を伝える前に、まずはジャーナリストやクルマに詳しい人たち自身が実際に試乗し、「あ、これは思っていたものと違う」と自然に感じてもらう機会を設計したのです。

メディア限定の試乗会(Public Dialog社提供)

触れさせることで、不確かさを上書きする

試乗会の導線は周到でした。会場は公道ではなく、コース全体を貸し切ったクローズド空間を選択して車両を配置。スペック表や商品カタログを配るよりも、来場者にハンドルの握りや静粛性、シートの座り心地をその場で確かめてもらうことを優先し、新興ブランドに対する不安やステレオタイプを解体していきました。

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郷愁の国ポルトガルから眺める欧州PR最前線:PRのネクストトレンド
岩澤康一(Key Message International代表取締役)

国内/外資のファームでデジタル、グローバルな広報・PR経験を積んだコミュニケーションの専門家。TBSワシントン支局に勤務後、在シリア日本大使館広報文化担当官、日本国際問題研究所広報部長などを歴任。米アメリカン大学より国際平和紛争解決法修士号、早稲田大学よりジャーナリズム修士号取得。日本広報学会理事。情報経営イノベーション専門職大学客員教員。弘前大学客員教員。著書に「世界標準の説明力 頭のいい説明には『型』がある」(SBクリエイティブ )。

岩澤康一(Key Message International代表取締役)

国内/外資のファームでデジタル、グローバルな広報・PR経験を積んだコミュニケーションの専門家。TBSワシントン支局に勤務後、在シリア日本大使館広報文化担当官、日本国際問題研究所広報部長などを歴任。米アメリカン大学より国際平和紛争解決法修士号、早稲田大学よりジャーナリズム修士号取得。日本広報学会理事。情報経営イノベーション専門職大学客員教員。弘前大学客員教員。著書に「世界標準の説明力 頭のいい説明には『型』がある」(SBクリエイティブ )。

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