社員の「共感」を促し、行動を変えるために必要なこと 3社の取り組みを聞く

ヤプリ主催による「インターナルコミュニケーション・デイ 2025 Autumn」が10月28日に開かれ、社内カルチャーのあり方や醸成の仕方について議論が繰り広げられた。
 
「『変わらないもの』『変えるもの』を見極め、社内カルチャー変革を促すコミュニケーション戦略」と題したライトニングトークでは、カッパ・クリエイトの吉冨知里氏、エイチ・ツー・オー リテイリングの田中周子氏、住友ゴム工業の平野敦嗣氏が登壇し、各社の取り組みを紹介した。

原点に立ち返り、新たな挑戦へ

「みんなのクリエイティブレストラン」を掲げ、回転寿司チェーンを展開するカッパ・クリエイト。かっぱ寿司は創業50年を迎えるブランドで、かつては業界ナンバーワンだった。しかし、他企業の参入により過去20年間で赤字を経験。M&Aによって他の回転寿司チェーングループの傘下に入り、何度も変化を経験し「何が正しいのかわからない」という迷いが生じ、自信を失っているように感じたと販促企画統括部長の吉冨知里氏は話す。

写真 人物 カッパ・クリエイト 事業企画本部 販促企画統括部 統括部長 吉冨知里 氏

カッパ・クリエイト 事業企画本部 販促企画統括部 統括部長 吉冨知里 氏

そこで同社はミッション・ビジョン・バリューの整理と策定に着手。原点に立ち返った時に「お客様の喜びが私たちの喜びです」という理念こそが、これまで変わらず大切にしてきた価値観であると再確認した。かつて、かっぱ寿司には「水流で寿司を流す」というユニークな仕組みがあり、そこにはワクワクや楽しさという価値があった。その良さを発信するため、社内外での接点を意図的に増やす取り組みを進めている。

例えば、専門の職人チームである外商部が運営していた出張回転寿司「どこでもかっぱ寿司」を活用し、販促企画統括部ではこの取り組みを社内外に発信するため、プログラムのリニューアルに合わせて、社内外のコミュニケーションの再設計を行った。これにより、外商部単独での提供サービスがミッションとつながる施策であることが社内にも理解され、ブランドのルーツを再認識するとともに、店舗スタッフのお客様とのコミュニケーションが一層活性化した。

また、かっぱ寿司のオリジナルソングは、かつてナンバーワンだった時代に流れたものであり、従業員にとって「お客様のお腹を満たした幸せな時代」を想起させるもの。その楽曲を令和版としてアップデートし、放映した。最後に吉冨氏は「ブランドのコアとなる部分は変わっていないものの、時代に合わせて進化させることで、提供価値がさらに高まることを従業員自身も実感している」と締めくくった。

企業と社員が高め合う「共鳴・共創」の仕掛け

「阪急百貨店」「阪神百貨店」をはじめ小売事業を展開するエイチ・ツー・オー リテイリンググループ。コーポレートコミュニケーション室長の田中周子氏によると、事業風土が異なる企業間の連携不足や共通言語の欠如、エンゲージメントの低さ、挑戦文化の不足といった課題があった。グループの多様性を強みに変え、全従業員の意識をひとつにまとめる必要性があったという。

写真 人物 エイチ・ツー・オー リテイリング 経営企画グループ コーポレートコミュニケーション室 室長 田中周子 氏

エイチ・ツー・オー リテイリング 経営企画グループ コーポレートコミュニケーション室 室長 田中周子 氏

田中氏は「個人の成長が企業の成長につながり、企業の成長が個人の成長の機会を高める」と話し、3つの戦略を紹介した。1つ目はデジタルとアナログの多層的情報共有だ。デジタル社内報「H2O通信Link」や壁新聞、サイネージを活用し、経営方針や部門間の取り組みを可視化することで、相互理解を高めた。

2つ目は、リアル交流による「共創マインド」の醸成。共創空間「うめラボ」を設け、部門・職種を超えた生成AI勉強会などの学びやリスキリング、異業種交流会などを実施した。さらに、社内報や統合レポートなどを通じて取り組みを発信し、PR・IRの質の向上にもつなげている。3つ目は、グループビジョンの浸透と共通言語化だ。社長メッセージや社内報を通じて挑戦を促し、事業や個人を後押しするカルチャーを醸成。H2O通信Linkでその内容を全従業員に発信し、従業員への浸透を図った。

田中氏は「成長の共鳴・共創」を生み出すために、企業理念を変わらない軸として据え、組織と個人のあり方を変えるべきだと話す。最後に「企業と個人が相互に高めあう共創ハブを目指したい」とまとめた。

トップの発信とミドルの行動変容が鍵

ダンロップブランドのタイヤやスポーツ用品の製造販売で知られる住友ゴム工業。広報部長の平野敦嗣氏によると、社内広報のミッションは単なる情報伝達でなく、企業理念や経営方針への「共感・腹落ち」を促し、「やる気に火をつけ、行動を生み出す」ことへと変化したという。また、社員が会社の課題を自分ごととして捉え、自発的に取り組む状態を目指していると説明し、2つの取り組みを紹介した。

写真 人物 住友ゴム工業 広報部 部長 平野敦嗣 氏

住友ゴム工業 広報部 部長 平野敦嗣 氏

1つ目は、経営トップ自ら現場に足を運ぶタウンホールミーティング「語る場」の開催だ。対面・オンライン併用で誰でも参加でき、1回90分・過去2年間で50回実施し、延べ約7900人が参加。経営方針の全社浸透や現場の声の経営反映、トップとの距離縮小につながったという。

2つ目はWeb社内報の強化だ。拠点にちらばる約50人の通信員がWord感覚で扱えるCMSで運用し、週平均12記事を配信。年間の総PV数は105万に。部門単位で身近な社員が主役となることで、横のつながりを意識させている。また、1955年から続く冊子版は会社支給PCを持たない工場勤務者向けに継続しつつも、Web導入により効率化を図る。2026年からはWeb社内報のダイジェスト版としてのPDF配信により、再構築予定だ。

平野氏によると、「語る場」の開始とWeb発信の強化により、現場社員の経営戦略への共感・腹落ちが進むことで戦略の実行力が高まり、会社業績の回復とエンゲージメント指標も改善したという。特にトップが直接現場に発信することとミドル層の行動変容が鍵だと話し、工場現場の改革として「輝く職長職研修」の例を紹介した。最後に「熱意ある社員が仲間を広げる焚火のような好循環づくりを進めていきたい」とまとめた。

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